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想定外のがんを見つける[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.90

髙見元敞 (森之宮クリニック(PETセンター)特任所長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-22

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がんの診断に際して、PET/CTが健康保険の適用になってから、今年で12年になります。PET検査の評価は徐々に浸透してはきましたが、臨床の現場では、その価値が十分に認識されているとは言えません。

PET検査の最も大きな利点のひとつは、まったく予想もしなかったがんを発見できることです。人の体は複雑な臓器の集合体である上に、患者の症状は限られていることが多く、自覚症状のない病気は見逃されがちです。特に見落とされることが多いのは重複癌です。しかし、患者にとってみれば、せっかく病院を訪れて精密検査を受けているのですから、「症状がなかったのだから、見逃されても仕方がなかった」では済まされないでしょう。特に高齢者では、いくつもの臓器に別々のがんが発生しがちで、症状が乏しいがんは見過ごされてしまいます。

たとえば、嗄声で発見された喉頭癌の患者に大腸癌が併存していても、患者が腹痛などの自覚症状を訴えない限り、大腸の内視鏡検査をすることはありません。あるいは、胃癌の患者に無症状の乳癌が存在しても、本人が異常を訴えなければ、乳房の精査をすることはないでしょう。健康保険での制約が厳しいことも手伝って、対象となっている病変に無関係の検査は、原則として行われることがないからです。近年、医療の専門分化が進み、診療の効率化が叫ばれるようになったこともあり、患者に対する医師の十分な目配りがおろそかになってきたのかもしれません。

ところが、一度に全身を診ることができるPET検査が登場して以来、重複癌の発見はもちろんのこと、症状が乏しく発見が遅れがちながんも、容易に発見できるようになってきました。その代表が、卵巣癌や膵臓癌など、いわゆるサイレントキラーといわれるがんの一群です。人間ドックのオプションで受けたPET検査で、予想外の膵臓癌が見つかることもあれば、乳癌の術後10年以上たってからPETで無症状の多発骨転移が見つかり、主治医が驚くこともあります。

がん診療には、そろそろPET Firstという考えが定着してもいいのではないでしょうか。

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