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潰瘍性大腸炎の難病認定[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.77

松井敏幸 (福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター(消化器内科)教授)

登録日: 2018-01-05

最終更新日: 2017-12-21

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潰瘍性大腸炎(UC)は、40年前から難病として調査研究の対象とされた。その代わりに、患者には協力費として医療費の軽減が実行されてきた。難病認定の基本は、原因が不明な希少疾患であり、診断基準が確立され、治療法が定まっていない疾患であることが条件であった。患者数が多い関節リウマチは難病認定されていない。その後40年間にUC患者数は増加し続け、現在約20万人となった。この数は先進国の中でも多く、米国に次いで世界第2位の患者数と推定されている。その他の難病は、既に重症度基準を取り入れて認定患者数を制限してきた。UCでは重症度を考慮する規定がほとんどなく、医療費総額が他疾患に比べて多く、地方自治体と国との費用分担にも不均衡が生じていた。

平成27年1月、「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行され、40年ぶりに新たな難病対策が策定された。その制度に従い各都道府県において指定医が認定された。医療費助成については、社会保障給付の制度として義務的経費に改められた。国は都道府県が支出する費用の半分を負担し、両者の負担不均衡は解消の方向となった。医療費助成の対象は、認定基準(診断基準+重症度分類)に該当することが原則である。ただし、特例により、重症度分類に該当しない軽症者であっても、高額な医療費が必要な場合にはその対象となる。

このように、軽症例を助成対象から除外すると、認定患者数は半減すると推定されている。なお、軽症患者は比較的安定した経過をたどると考えられている。その根拠は、研究班で実施した臨床登録例のうち、軽症例の経過分析研究から明らかである。すなわち、軽症例は初発時約半数を占め、その後もより重症化する例は少ない。また、より重症例も経過中に軽症化すれば、良い経過をたどることが多いのである。

このように、新難病法による助成制度には便益が多いが、軽症例の除外によりこれまでの疫学調査結果との整合性が失われ、UC全体の病態把握が難しくなる可能性がある。その対策として、精度の高い疫学調査・研究が必要である。臨床個人票の電子化入力が絶対に必要な理由がそこにある。

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