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子育てファースト[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.121

山縣然太朗 (山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座教授)

登録日: 2018-01-08

最終更新日: 2017-12-21

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産業医をしている企業の部長から相談された。優秀な30歳代の部下に昇進を打診したら断ってきた、最近の若者は何を考えているかわからん、と。理由は子育てをしたいから。昇進して帰宅は夜遅く、休日出勤するようでは子育てができない。妻に子育てを強要されているわけでない。父親として子育てがしたいのだ。子育てや家庭を大切にするワーク・ライフ・バランスの感覚を持つ青年たちにとって、仕事一筋世代はもはやロールモデルではない。特に、優秀な若者ほど同様の価値観を持っているように思う。だから、優秀な若者が退職して起業する。時間配分を自分で決められること、ジョブコントロールが高いことは、多様化したワーク・ライフ・バランスにとって重要な要素である。

働き方改革が推進されている。様々な議論がされているが、私は子育て支援の立場から次のことを提案したい。子どもが小学校に入学するまでは両親ともに、就業時間短縮勤務をして保育園への送り迎えと家族そろっての夕食の時間を確保すること。子どもの行事への参加を最優先して夏季休暇や有給休暇の取得をすること。いずれも子どもの望ましい生活リズムや親子の関わりを重視した「子育てファースト」と男女平等の視点からの提案である。医療現場で率先してこれができれば、ブラック中のブラック企業である医療現場に、生き生きとした優秀で人間味のある「患者ファースト」のスタッフが多く集まるのではないだろうか。

かく言う私は、週末だけの押し付け「子育てファースト」の親父であった。毎週末、ハイキングや山登り、スキーに子どもを連れ出した。2歳離れた長女、長男が高校生のときに言った。休みになるとお父さんに付き合わされて本当に疲れた、と。日常の関わりのなさを週末に取り戻そうとした私の子育ては自己満足だった、と肩を落とした。先日、長女が結婚式の際に手紙をくれた。子どもの頃に連れ回されていろいろな体験をできたことが今の仕事や生活に役立っている、自分の子どもにもそうしたい、と。親のありがたみは後からわかると満悦するのも親の自己満足か。

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