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プライマリ・ケア医学の日本の父・日野原重明先生[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.117

板東 浩 (日本プライマリ・ケア連合学会第8回学術大会会長)

登録日: 2018-01-08

最終更新日: 2017-12-21

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現代の医聖ともいわれる日野原重明先生が105歳で静かな眠りに。予防医学や人間ドック、生活習慣病など、パイオニアとして残された功績は大きい。日本プライマリ・ケア(PC)連合学会第8回学術大会(2017年5月)で日野原先生からの祝辞は最後のコメントとなった。

実は日野原先生は私の医学の師匠であり、人生の師でもある。ECFMG資格を取得後、米国のfamily practice residency program(FPRP)で臨床研修中に国際電話で相談することも。その後、内科専門医会やPC学会、音楽療法領域の日本バイオミュージック学会、日本音楽療法学会でも大会担当などの機会を賜り、日野原先生のお陰で現在の私が存在する。

国際学会の懇親会で懐かしく思い出すことがある。「板東君、僕はあと数年先に大きなプロジェクトを考えているんだ」と。それが「新老人の会」(New Elderly Association:NEA)の設立だった。NEAは全国組織で海外にも支部があり、私の役割は健康・文化教室、音楽・音楽療法などの啓発とお世話。日野原先生は100歳からfacebookを創め、Smart Senior Association (SSA)の活動も盛んであった。

「日野原イズム」を学ぶと人生が変わる。使命とは自分の時間を人のために使い、偶察力(serendipity)とは素敵な偶然に出会い予想外のものを発見できること。先生との不思議な縁や運命をずっと感じている次第である。

日野原先生が逝去されたニュースは世界を駆け巡り、英語圏でもいろいろな報道が。検索サイトでHinohara and New York Timesや世界家庭医機構(WONCA)、primary health careなどのキーワードを入力してみてほしい。

日野原先生は音楽家でもある。自身が作曲したノクターンは秀逸で、私のピアノ演奏とプロの朗読とでコラボさせて頂いたことも。日野原先生は今どうされているだろうか? 情熱的に語って文章を綴り、歌ってピアノを弾き、空の彼方で微笑んでいるかもしれない。そして、100年間わが国でいろいろな種を蒔いた企画が大きく育ち、現在の豊穣な稔りをきっと喜んでおられることと存じます。

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