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安定冠動脈疾患への待機的PCI、「機能的虚血」を算定要件に―「性別適合手術」は来年度から保険適用で概ね一致【どうなる?診療報酬改定】

登録日: 2017-11-30

最終更新日: 2017-11-30

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厚生労働省は11月29日、中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)で、安定冠動脈疾患に対して待機的に実施する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について、術前の検査等で機能的虚血が確認されたことを算定要件に追加する考えを提示した。

次期診療報酬改定に向け、技術的事項の具体的方向性を議論した中医協総会

■ガイドラインで虚血なしへのPCIは不適応

厚労省によると、2016年度に実施された主なPCI(経皮的冠動脈形成術、経皮的冠動脈ステント留置術)のうち、約70~80%を安定冠動脈疾患に対する待機的PCIが占めている。

現行の診療報酬点数上、PCIは造影検査で「75%以上の狭窄病変」が認められた場合に実施すると算定できる。一方で、造影上75%の狭窄がある冠動脈病変のうち、ほぼ半数で機能的虚血が認められなかったとの研究報告があり、日本循環器学会など8学会が作成したガイドラインでは、虚血がないことが証明されている患者には「PCIの適応はない」としている。さらに、厚労省研究班の報告では、PCI実施前の虚血検査の実施状況に、施設間で大きなバラツキがあることが明らかになっている。

これを踏まえ厚労省は、安定冠動脈疾患への待機的PCIの算定を、冠血流予備量比(FFR)測定や負荷心電図検査など、術前検査で機能的虚血が確認された症例に限定する方針を提示。委員からは虚血検査に伴う侵襲を指摘する声が上がり、同省は具体的な基準値等を設定する際に「考慮する」とした。

■施設・患者要件の設定を要望する声も

同日の会合では、生物学上の性と心理的な性が一致しない性同一性障害への「性別適合手術」を、来年度から保険適用とする方向性も大筋で了承された。

日本精神神経学会の調査によると、性別違和を主訴として医療機関を受診した患者は2万2435例(2015年12月末時点)に上る。治療では、カウンセリングなどの精神療法、ホルモン療法のほか、医療チームによる適応判定が行われた場合に手術療法が行われる。ただ、保険適用となっているのは精神療法のみで、手術費用が100万円以上の高額となるケースも多い。

厚労省は、保険適用の提案の理由として、学会による診断・治療ガイドラインの整備や認定医制度の創設など、医療提供体制の整備が進んでいる状況を説明。さらに、「性同一性障害特例法」(用語解説)で、性別適合手術を受けることが性別変更の事実上の要件となっていることも示した。

同省の提案への反対は、診療側、支払側ともになかった。ただし、「手術を実施できる施設や対象患者を限定してはどうか」との意見や「術後に元に戻りたくなる人もいると聞く。追跡調査の実施を検討すべきだ」などの指摘が出た。

【用語解説】性同一性障害特例法
2004年施行。家庭裁判所で戸籍上の性別変更の審判が認められる要件として、①20歳以上、②婚姻していない、③未成年の子がいない、④生殖腺がない、または機能を永続的に欠く状態にある、⑤変更を希望する性別の性器に近い外観を備えている―を定めている。

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