厚生労働省の「医師需給分科会」では、医師偏在対策の議論が年末の取りまとめに向けて進んでいる。地方の現場視点に立った歯に衣着せぬ意見をソフトな口調に乗せて発信する全国自治体病院協議会(全自病)の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)に、医師偏在対策のポイント、さらに地方創生に対する問題意識を聞いた。
医師偏在対策は30年前から問題になっていたことで、議論する度に、理想論や夢物語のような対策が出てきては、中途半端にしか実行されずに終わって、一向に解消されない。その歴史の繰り返しを私は身をもって知っています。
日本では、海外のように地域ごと、診療科ごとの医師数を州政府や学会が制限していません。プロフェッショナルオートノミーと言いますが、それが利いていたら地方の病院は医師確保に苦労しません。現状は「プロフェッショナルフリーダム」「何でも自由主義」の有様で、野放図です。
私は医師需給分科会の中間取りまとめ(2016年6月)に記載された14項目の対策(12頁表)がきっちり実行されれば、医師偏在は大分解消されるとみています。
全自病が9月に厚労省へ出した提言の中でも、実現を強く要望しました。偏在対策、地域医療構想、働き方改革など、さまざまな施策の検討が同時並行で進んでいますが、管理者要件は最大の要だと思います。
この方向性は、日本医師会と全国医学部長病院長会議の合同提言(2015年12月)でも、同様の趣旨の提案が出されています。
本当は100%にならないとおかしい。「ヒポクラテスの誓い」を立てて医師になっているのだから、どこへでも行くというのが本来の姿で、44%なんて低すぎます。匿名調査だから、そういうものなのかもしれませんが。