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(1)除菌後胃癌の頻度と危険因子[特集:ピロリ総除菌時代における除菌後胃癌の特徴]

No.4881 (2017年11月11日発行) P.26

加藤元嗣 (国立病院機構函館病院院長)

西村友佑 (国立病院機構函館病院消化器科)

久保公利 (国立病院機構函館病院消化器科医長)

間部克裕 (国立病院機構函館病院消化器科部長)

登録日: 2017-11-10

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  • わが国ではヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染胃炎に対して,2013年に除菌治療の保険適用拡大がなされてから,飛躍的に除菌治療数が増加した

    H. pylori除菌には胃癌予防効果が期待できるが,除菌後も胃癌リスクは継続し,除菌後胃癌が発見されることは少なくない

    除菌後胃癌のリスク因子として,早期胃癌の内視鏡治療後,粘膜萎縮が指摘されている

    1. H. pylori除菌の現状

    2014年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)の国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)がヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)除菌による胃癌予防策を推奨した1)。多くの胃癌はH. pylori感染胃炎から発症し,除菌治療でその発症を3~4割以上減らせるとした。患者数,H. pylori検査・除菌の費用,医療対策の優先度など国内の事情に応じて,除菌による胃癌予防策を各国に求めている。わが国も胃癌予防策として,二次予防の胃癌検診だけではなく,H. pylori除菌による一次予防に取り組む必要がある。

    2013年2月には,H. pylori感染胃炎に対して除菌治療の保険適用拡大がなされ,H. pylori感染者は保険診療で除菌治療を受けることができるようになった。除菌治療を受ける年齢が若いほど,除菌による胃癌発症の抑制効果を期待できるが,除菌後にも一定の割合で胃癌の発症が認められる。すなわち,慢性胃炎が進んだ時点で除菌を行っても,完全に胃癌の発症を抑制することは不可能であり,除菌後も内視鏡検査を中心とした画像検査を定期的に続けることが必要である2)

    H. pylori除菌後胃癌には,通常の胃癌とは異なった病理学的/形態学的特徴が見られることがしだいに明らかにされてきている。これらの特徴を理解し,H. pylori感染状態を把握した上で胃癌スクリーニングを行う必要がある。胃癌は活動性胃炎を背景に発育進展するが,除菌治療による胃内環境の劇的な変化が胃癌の発育進展に大きな影響を与えていることも考えられる。

    2. 除菌後胃癌の頻度

    2013年の除菌治療の保険適用拡大に伴い,一次除菌治療件数は年間60万人から150万人へと急激に増加した。2000年に初めて胃・十二指腸潰瘍に対する除菌治療が保険適用となってから,これまでに約1千万人が除菌治療を受けたと推測できる。ただし,わが国のH. pylori感染者は3800万人と推測されているので,いまだ3000万人近くが除菌治療を受けていないことになる3)

    わが国の若年および壮年層でのH. pylori感染者は年々減少している。一方,除菌治療に成功した既感染者の増加とともに除菌後胃癌が増え,今では発見胃癌の約1/3を除菌後胃癌の症例が占めているとの報告もある4)。除菌治療の普及によって,今後ますますH. pylori感染胃癌の頻度は減少する一方,除菌後胃癌の割合が増加する傾向は続き,少ないながらもH. pylori未感染胃癌の割合が相対的に増加すると考えられる。

    除菌後胃癌の487例の検討では,初発胃癌が303例,早期胃癌内視鏡治療後の異時胃癌(二次癌)が184例で,未分化型胃癌の割合は14%であった5)。比較的若年の消化性潰瘍症例を対象として除菌治療を行ったTakeら6)のコホート研究では,平均観察期間9.9年における除菌治療群の胃癌発見頻度は約2%(21/1030)と報告され,未分化型胃癌の発生頻度が比較的高いことが指摘されている。

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