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神経変性疾患とプリオン仮説【アミロイドβ,α-シヌクレイン,tauなどの異常蛋白はプリオン様に伝播して病変が広がる】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.51

崎山佑介 (鹿児島大学神経内科)

登録日: 2017-08-29

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Creutzfeldt-Jakob disease(CJD)に代表されるプリオン病は,孤発性,遺伝性,獲得性に分類される致死的な海綿状脳症である。その病原体であるプリオンは,核酸を持たない異常蛋白にもかかわらず,同種あるいは異種間に伝播(感染)する。この蛋白質のみで病気が伝播されることをプリオン仮説と呼び,この説を提唱したPrusinerは1997年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。

プリオン病では,正常型プリオン蛋白(PrPC)が異常プリオン蛋白(PrPSc),すなわちプリオンに構造変化することで自己伝達や自己凝集が生じると考えられているが,それによって神経毒性が生じるメカニズムなど,いまだ解明されていない謎が多い。

近年,主な神経変性疾患におけるアミロイドβ,α-シヌクレイン,tauなどの異常蛋白が,一個体の中枢神経内で細胞間伝播することや,動物実験では個体間でも伝播が可能であることが報告されている。これらの伝播機構はプリオンに類似しているため,プリオン様伝播(prion-like propagation)と呼ばれている1)

プリオン仮説に基づいた蛋白凝集や伝播メカニズムを解明することは,プリオン病にとどまらず,アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の克服にとっても重要な課題であると考えられている。

【文献】

1) 水澤英洋:Clin Neurosci. 2015;33(3):252-5.

【解説】

㟢山佑介 鹿児島大学神経内科

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