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現場リポート①「普通の耳鼻科」でグラム染色?─専門家でなくても適正処方を実現できたワケ(奈良県・まえだ耳鼻咽喉科クリニック)[特集:薬剤耐性問題から変わる感染症診療─抗菌薬処方のこれから]

No.4870 (2017年08月26日発行) P.14

登録日: 2017-08-25

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  • 日常診療でグラム染色を実施し、実際の画像を患者に見せながら処方の根拠を説明することで、抗菌薬の適正使用につなげている耳鼻科クリニックがある。しかも、クリニックを切り盛りする院長夫妻は元々感染症の専門家ではなかったという。「普通の診療所」がグラム染色の導入に至った経緯とその効果とは─。

    グラム染色なしに感染症診療はできない

    奈良県橿原市、近鉄大和八木駅から線路沿いに徒歩5分。まえだ耳鼻咽喉科クリニックは一見何の変哲もない町の小さな診療所だが、同院では、医師が検体を採取し、患者が待っている間に看護師が検体を染色、薬剤師が画像を基に処方提案を行うという、診療所としては異色の診療を行っている。

    染色画像で多核白血球のみが確認され、細菌が認められない場合、抗菌薬は原則処方しない。明らかに起炎菌と判断できる場合は狭域スペクトル抗菌薬を選択する。ただし、画像で細菌が認められても年齢によっては定着菌の可能性も考えて抗菌薬の必要性を判断する。そして医師は再び患者を診察室に呼び、モニターに「本物の細菌」を映しながら、起炎菌や炎症の状態、処方の根拠について説明する。

    「グラム染色なしに感染症診療は考えられません」。院長の前田稔彦氏と薬剤師の妻・雅子氏はそう口を揃える。しかし、2人は開業まで感染症の専門的な研修を受けた経験はなかった。なぜ今の診療スタイルに至ったのか。

    初めは「未知の診療スタイル」に躊躇

    同院は2003年に開業。開院当初は漢方診療を中心に据えようと考えていたが、抗菌薬を欲しがる患者は予想以上に多く、処方ポリシーを守って患者が減ってしまうことを恐れた。内心「まずい」と理解してはいたものの、漫然処方が常態化していった。

    転機は雅子氏が聴いた感染症専門医の講演だった。グラム染色の重要性を説き、「訓練すれば誰でも菌種を推定できる」と力説する専門医の言葉に感銘を受け、稔彦氏に導入を持ち掛けたが、「そんな未知の診療スタイルで何かあったら責任が取れない」とすぐには導入に至らなかった。

    そこで検査技師資格も持つ雅子氏は、他の検査技師の力を借りながら画像を読むトレーニングを開始。半年程経った頃には所見と培養結果が一致するようになり、2004年12月、ひとまず診療に導入することになった。稔彦氏は半信半疑だったが、次第に考えを改めるようになる。「グラム染色の結果に基づいて抗菌薬を処方すると『もう鼻水が出なくなった』と喜ぶ患者さんが次々に出てくる。抗菌薬って本来はこんなにバシッと効くものだったのかと、ものすごく感動しました。半年もしたらグラム染色を手放せなくなりました」(稔彦氏)

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