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(1)乾癬治療のパラダイムシフト─生物学的製剤の登場による早期介入・治療目標の変化 [特集:変化しつつある乾癬治療の今]

No.4761 (2015年07月25日発行) P.18

加藤則人 (京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 乾癬の治療目標である臨床的寛解については,国際的なコンセンサスのもとに皮疹やQOLの指標などにより,わかりやすい形で定義されることが望まれる

    乾癬の皮疹を早期に寛解導入して維持することは,患者の人生を豊かなものにする

    乾癬への早期介入は,発症からいつまでを“早期”とするか,どのような患者を対象とするか,など解決すべき課題が多い

    1. わが国での乾癬治療

    わが国における乾癬の有症率は0.3%程度と推定され,発症年齢は,30~40歳代以前に発症する若年群と50歳代以降に発症する高年群にわかれる。発症すると皮疹はきわめて慢性に続くことが多い。乾癬の臨床像を図1に示す。乾癬の皮疹によるボディ・イメージの変化や痒み,鱗屑の存在は生活の質(quality of life:QOL)に影響を及ぼす。従来は,乾癬に対する効果的な治療が少ないことに加え,乾癬に関連した内臓病変はないと考えられていたことから,医師は患者に対して「乾癬は付き合っていく病気」としばしば説明していた。

    約10年前の乾癬に対する主な治療法はビタミンD3外用薬,ステロイド,紫外線療法,レチノイド,シクロスポリンであった。治療の進め方として,まずは全身性副作用の少ないビタミンD3外用薬,ステロイドなどの外用療法から始め,数カ月から時には数年たっても効果がなければ紫外線療法,それでも効果がなければエトレチナートやシクロスポリンの内服療法と段階的に変更する(図2)のが一般的であった。寛解しない状態のまま外用療法を長年続けている患者も多く,治療をあきらめてしまう患者も少なくなかった。しかし,わが国ではこの数年,乾癬治療にきわめて高い効果を示す生物学的製剤が使用可能になったこと,乾癬を単なる皮膚の病気ではなく全身性炎症により様々な疾患を引き起こす疾患群ととらえるようになってきた1) ことなどもあり,乾癬とその治療に関する考えを大きく変える時期を迎えている。



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