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惑星直列と潮汐変動[お茶の水だより]

No.4867 (2017年08月05日発行) P.18

登録日: 2017-08-03

最終更新日: 2017-08-03

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▶科学館などで展示される太陽系模型では、惑星たちが太陽へ向かって一列に並んでいる。多くの惑星が地球の黄道上の太陽の位置または正反対の位置に並び、見かけ上一直線をなすことを「惑星直列」と呼ぶ。この現象が観測される確率はきわめて低い。惑星の公転周期は88日の水星から165年の海王星まで差が大きいからだ。しかし「惑星直列は来年起こる」と公言する人物がいる。天文学者ではない。厚生労働省の鈴木康裕医務技監だ。
▶その心はこうだ。まず来年4月には診療報酬・介護報酬同時改定が控え、団塊の世代が75歳以上となる2025年より前では最後の同時改定となる。第7次医療計画、第7期介護保険事業計画も同時に始まり、今後は両計画とも見直しが3年ごとになり“公転周期”が揃う。国民健康保険は都道府県に移管され、医療費適正化へ向け保険者インセンティブも強化される。来年一斉に始まるこれらの変革を鈴木氏は惑星直列に喩えているのだ。
▶惑星直列は、鈴木氏が前任の保険局長時代から講演などで使っており、医療団体の幹部には耳馴染みになっているようだ。医務技監は7月に新設された事務次官級ポストで、医療・保健政策の司令塔と位置づけられる。そうした立場にある人物の口癖だけに、ただの言葉遊びとも捨て置けない。
▶宇宙の惑星直列が地球に及ぼす影響について、地球物理学の定説は、太陽や月に比べて他の惑星による潮汐力の変動はわずかで「天変地異は起こらない」とする。一方、鈴木氏が唱える惑星直列は行政計画や保険点数の改変という“潮汐力”の変動を伴う。この場合、各地域が地球に比せられよう。医療・介護従事者は惑星直列に備え、混乱に陥らないよう影響を注視する必要があるだろう。

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