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肺癌に対する重粒子線治療の現状と展望【正常肺への影響が少ないことがメリット。多施設共同前向き研究も開始された】

No.4857 (2017年05月27日発行) P.58

吉岡靖生 (がん研有明病院放射線治療部 高精度放射線治療担当部長)

中山優子 (神奈川県立がんセンター放射線治療科部長)

登録日: 2017-05-25

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  • 肺癌に対する重粒子線治療は,生物学的効果の増強や治療期間の短期化(寡分割照射),正常肺の照射体積の低減など,メリットが大きい可能性があると考えます。現在までの知見の蓄積,照射スケジュールの変遷,特有の有害事象,予防的または転移リンパ節への照射/非照射の功罪,薬物療法の併用,今後の展望などについて,神奈川県立がんセンター・中山優子先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    吉岡靖生 がん研有明病院放射線治療部 高精度放射線治療担当部長


    【回答】

    荷電粒子は体内に入るとエネルギーがしだいに小さくなるため,ある深さで止めることができます。その際,止まる寸前で最大の電離を生じ,この物理学的特性はブラッグ・ピーク(bragg peak)と呼ばれています。荷電粒子線治療では,ブラッグ・ピークを腫瘍の大きさに拡げた拡大ブラッグ・ピーク(spread-out bragg peak:SOBP)を病巣に一致させることで,優れた線量分布を得ることができます。荷電粒子線では,腫瘍の手前側の線量も大幅に低下させることができるため,1回に大線量を照射すること(寡分割照射)が可能となります。また,重粒子線は,生物学的効果比(relative biological effect:RBE)がX線や陽子線と比較して2~3倍と大きいため,がん細胞に対しより強いDNA損傷を与えることが可能とされています。

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