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【この人に聞きたい】アレルギー学における新たな半世紀とは?

No.4856 (2017年05月20日発行) P.10

土橋邦生 (群馬大大学院保健学研究科教授)

登録日: 2017-05-19

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  • 乳幼児期のアレルギー発症予防、バイオマーカー
    開発による効果予測、個別化治療の確立が課題。
    診断・治療の際は職業・環境の影響も考慮を。

       

    〔略歴〕1978年群馬大卒。米ペンシルベニア大ポストドクトラルフェロー、群馬大呼吸器・アレルギー内科講師などを経て、2005年より現職。日本職業・環境アレルギー学会理事長、国際喘息学会日本・北アジア部会副幹事長などを務める。

    免疫学者の石坂公成氏が、1966年にアレルギーの原因物質IgEの発見を発表してから昨年で50年。日本アレルギー学会は6月16~18日、「紡ぎだす、アレルギー学の新たな半世紀─知りえたコト、解くべきコト」をテーマに都内で第66回学術大会を開催する。会長を務める土橋邦生氏に「新たな半世紀の課題」を聞いた。

    ─アレルギー学における新たな半世紀の課題とは。

    IgEの発見後の半世紀に、多くの研究者の努力によってアレルギー学は大きな進歩を遂げた。その結果、治療薬は進歩し、ガイドラインの普及によって喘息死亡率や入院患者数は激減するなどの成果がみられた。しかし依然としてアレルギー疾患の発症率は増加し続け、完治は達成できていない。
    新たな半世紀の大きな課題の1つは、乳幼児期のアレルギー疾患の発症予防である。例えば最近、乳児に早期にピーナッツを含む食品を食べさせた方がピーナッツアレルギーの発症予防効果が高いことが話題になった。乳幼児期の経口摂取介入、環境による影響など、アレルギー疾患の発症予防の確立が世界のアレルギー研究においても重要な課題とされている。
    また、遺伝と環境が複雑に関与するアレルギー疾患の病態の解明は断片的にしか進んでいない。次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子発現解析、エピゲノム解析、プロテオーム解析など技術革新により一定の成果はみられるが、疾患の治癒のためには、さらなる病態メカニズムの解明が必要。一方で新たな半世紀の間には、ゲノム編集技術や再生医療を応用した治療も進む可能性がある。

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