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(9)高血圧─服薬中の脳卒中リスクの伝え方 「薬を飲んで血圧は下がっているから大丈夫」と生活習慣を改善しない[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.54

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

土橋卓也 (製鉄記念八幡病院副院長/高血圧センター長)

登録日: 2016-09-01

最終更新日: 2017-04-20

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    身長172cm,体重84kg,BMI 28.4,腹囲92cm,診察室血圧134/86mmHg,心電図上軽度の左室肥大あり。TG 176mg/dL,尿酸7.6mg/dL,その他の検査値は正常範囲。
    54歳,男性。会社員。
    30歳代後半より,健診で高血圧を指摘されるも放置。40歳代半ば,職場の保健師から受診を勧められ,高血圧の治療を開始した。現在,Ca拮抗薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を朝食後に服用している。
    既往歴:特記すべきことなし。家族歴:母親が高血圧。飲酒:缶ビール(350mL)1~2本を週4~5回,加えて焼酎1合程度を月1~2回,付き合いで多量飲酒あり。喫煙:なし。運動:月1~2回ゴルフをする程度。食生活:妻と高校生の息子の3人暮らし。昼は仕出し弁当,夜も外食が多い。血圧計は持っているが,ほとんど測ったことがない。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶生活習慣を改善しない

    約10年の服薬歴がある,いわゆる「メタボ型」高血圧である。幸い,高血圧による臓器障害も軽度であり,診察室血圧も『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』1)が提唱する降圧目標140/90mmHg未満を達成している。肥満,飲酒過多,運動不足のほか,恐らく食塩摂取量も多いと思われる食習慣と推察され,生活習慣修正を指導しているが,自覚症状もなく,血圧値も基準値内であることから,「薬を飲んでいるから大丈夫」と言って改善しようとしない。

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)患者─医師の信頼関係

    職場の保健師から勧められて受診。以後,定期的に通院,服薬していることからアドヒアランスは良好と言える。ただ,「薬をもらうために通院している」という意識が強く,高血圧の治療を通じて主治医との信頼関係を構築し,健康長寿をめざすという意識に欠ける。

    (2)高血圧に対する正しい知識

    高血圧の治療が必要であることは理解しているが,その目的とそのために自身がすべきことが十分理解できていない。家庭血圧測定,生活習慣の修正を勧めても実行できない。

    (3)生活習慣の修正に対する意識

    肥満,飲酒,運動不足など,改善すべき生活習慣が集積しているが,「血圧も下がっているし,少し太っているくらいが長生きできる」と言って改善する意識に乏しい。

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