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(1)DPP-4阻害薬のインパクト ─糖尿病治療はどのように変わったか? [特集:新薬で変わる糖尿病治療]

No.4725 (2014年11月15日発行) P.20

矢部大介 (関西電力病院糖尿病・代謝・内分泌センター部長/同病院疾患栄養治療センター長)

清野 裕 (関西電力病院病院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-17

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  • DPP-4阻害薬は単独で用いた場合,低血糖リスクが少なく体重増加をきたしにくい。また,インスリン初期分泌不全を主体とする日本人2型糖尿病の病態に適した治療薬として幅広く使用され,わが国の糖尿病治療を大きく変革している

    DPP-4阻害薬をSU薬と併用する際には,年齢や腎機能,SU薬の用量に注意が必要であり,SU薬の用量を減量した上でDPP-4阻害薬を開始するとともに,低血糖に関する患者教育が不可欠である

    DPP-4阻害薬の血糖改善効果は,ほかの糖尿病治療薬に比してより生活習慣に影響されやすく,特に習慣的に摂取する食事内容に影響を受けることが示唆されており,今後,DPP-4阻害薬の有効性を高める食事療法の確立が急務とされる

    DPP-4阻害薬の長期安全性について,懸念された膵疾患リスクを含め明らかな問題は指摘されていないが,現在進行中の大規模臨床試験からの知見もふまえつつ,今後も注意深く観察を続ける必要がある

    1. 日本人2型糖尿病の病態とDPP-4阻害薬

    DPP-4阻害薬は上市後わずか5年間で,わが国の糖尿病受療者の半数を超える300万人近くに使用され,糖尿病治療を大きく変革している。2009年末にシタグリプチン(ジャヌビア1397904493,グラクティブ1397904493)が上市され,現在までにビルダグリプチン(エクア1397904493),アログリプチン(ネシーナ1397904493),リナグリプチン(トラゼンタ1397904493),テネリグリプチン(テネリア1397904493),アナグリプチン(スイニー1397904493),サキサグリプチン(オングリザ1397904493)の7種類がわが国で使用可能である(表1)1)
    DPP-4阻害薬は,インクレチンと呼ばれる2種類の消化管ホルモンGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide),GLP-1(glucagon-like peptide-1)の作用を高めることで血糖改善効果を発揮する2)3)。インクレチンは経口摂取した様々な栄養素に応答して消化管から分泌され,膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進する。したがって,内因性インクレチンの活性を高めるDPP-4阻害薬を単独で用いた場合,低血糖リスクは低い。加えて,DPP-4阻害薬はグルカゴン抑制も期待できる。
    さらに,インスリン初期分泌不全を主体とする日本人や東アジア人では,他民族と比してDPP-4阻害薬がより奏効することも示され4)~6),日本人を含む東アジア人の糖尿病の病態に適した薬剤として期待される。なお,DPP-4阻害薬は半減期や排出経路の違いから,服薬回数や腎・肝機能障害を有する患者への適応が異なるが,血糖改善効果についてはおおむね同等とされる。

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