医療否定キャンペーンのターゲットの1つは生活習慣病治療の是非。町の開業医として自身のブログでこうした問題に舌鋒鋭く斬り込んでいる桑満おさむ氏に、この影響と医療不信患者への対処術を聞いた。
昨年夏頃から集中的に取り上げていた一部週刊誌の影響は小さくない。ただ、新聞広告などで週刊誌の見出しだけしか見ていないケースが多いようだ。私の場合は医療に関する特集が掲載されている時は購入し、問い合わせに実物を見せて対応している。この問題がより深刻なのは、週刊誌のニュースが1次情報となりネット上で2次、3次と拡散している点。それを目にした子どもから「お父さんこの薬やめた方がいいよ」と言われて来院する患者もいる。
患者の選択権が医師の裁量権を上回る時代になった。例えば降圧薬として、利尿薬、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、βブロッカーがあって、「あなたの症状ではこの薬を推奨します」というのが今の医療。しかし選択権といっても患者にそれを判断できる基準はないので医師を頼るしかない。生活習慣病治療薬など即時的に効果が実感しにくい薬を長期間服用する必要がある患者が増え、医師性悪説が成立しやすい環境になっている。まだまだ恵まれた職業と思われている医師を悪とすることで、週刊誌が読者を掴んだ現状は認識しておくべきだ。
それはある。今までもそうしていればよかった。また医薬分業の普及で医師が薬の知識をMRに頼りがちになっていることも影響しているのではないか。私は院内処方なので勉強が欠かせない。専門の泌尿器でいえば不可逆性の尿失禁の治療薬としてβ刺激薬の「スピロペント」を処方するが、これは喘息の薬。日頃連携のない薬剤師だと「この先生、尿失禁の患者に喘息の薬を出してるよ」と勘違いされるトラブルもある。
患者の意識と医師を取り巻く環境の変化が重なり、医療不信が最大化する時代になってしまった。患者のホンネでいえば、毎月同じ薬なら1年間処方箋が有効であってほしい。直接顔を見て状態を判断し、それならこれでいきましょう、という医師本来の仕事の重要性が世の中に理解されていないという問題が根底にある。
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