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インフルエンザによる死亡が高齢者に多いのはなぜか? 【基礎疾患と重症化の関係】

No.4842 (2017年02月11日発行) P.60

山谷睦雄 (東北大学大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座教授)

登録日: 2017-02-08

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  • インフルエンザウイルス感染による死亡者が基礎疾患を有する高齢者に多いのはなぜでしょうか。

    (質問者:岐阜県 K)


    【回答】

    2009年の新型インフルエンザ流行の際の国内調査では,感染者は若年者の患者が圧倒的に多く,一方で死亡率は患者の年齢とともに上昇したという特徴がありました1)。また,患者の年齢とともに基礎疾患を有する割合が増加していました。慢性呼吸器疾患〔気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)〕と悪性腫瘍が多く,糖尿病,慢性心血管疾患と高血圧症などもありました。

    これまでにインフルエンザで死亡した患者を対象にした多くの調査では,やはり65歳以上の高齢者の死亡率が上昇していました。呼吸器疾患や心血管疾患の基礎疾患を有する高齢者の死亡が,これまでにも繰り返し報告されています。

    インフルエンザウイルスに感染すると,インフルエンザウイルスの増殖による刺激や細胞への傷害作用によって,肺や気管支に種々の変化を生じます。すなわち,気管支内腔の喀痰貯留,気管支粘膜の炎症に伴う浮腫・傷害,気管支平滑筋の収縮,肺胞傷害,肺胞内滲出液貯留,二次性細菌感染などを生じます2)。このため,気道狭窄や閉塞が起こり,気流制限が生じます。さらに,肺胞内滲出や肺炎では肺胞におけるガス交換が障害されます。これらの機序により,血液の酸素化や炭酸ガスの排泄が低下し,COPDや気管支喘息,肺線維症などの慢性呼吸器疾患患者では呼吸不全が生じます(表1)。

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