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外務省で医師として働くというキャリア ─ どのような役割があり、どのような経験を積むことができるのか(下)【OPINION】

No.4832 (2016年12月03日発行) P.20

仲本光一 (外務省診療所長)

寺井和生 (外務省上席専門官)

登録日: 2016-11-29

最終更新日: 2016-11-28

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  • 1.医務官が診療している疾患の動向

    以下に、在外公館で医務官が診療や医療相談を行った疾患の動向を示す。これらのデータは、各公館医務官による月報に記載された、ICD-10分類による診療報告を基に集計したものであり、同一人物が同一疾患で同一月に複数回受診したとしても1回と集計される。別疾患での受診の場合はそれぞれ集計される。一方、同一人物、同一疾患であっても月をまたいだ複数回受診の場合、2回と集計される。

    年間延べ4万件前後の医療相談の多くは公館館員や家族からのものであるが、1万件近い在留邦人からの医療相談も受けている。なお、在留邦人に対する医療行為については任地国国内法との関係で制約されるが、自国民保護は在外公館の重要な業務の1つであり、各公館は邦人からの医療相談等にできる範囲で積極的に取り組んでいる。

    医務室で最近4年間(2012〜15年)に診療した疾患の内訳に大きな変化は見られなかった。ICD-10のカテゴリーXXIに属する相談(予防接種や検査結果説明等)が総診療の 3分の1を占め最も多く、カテゴリーX(呼吸器系疾患)、I(感染症)と続く。ICD-10分類ごとに過去(1987~1997年)のデータ1)と比較すると(表1)、統計検定で有意差を認め、かつ臨床的に有意な変化を認めた項目は、カテゴリーI、V(精神及び行動の障害)、IX(循環器系疾患)並びにXIII(筋骨格系疾患)であった。最近15年間に感染症と循環器系疾患の頻度が減少し、精神疾患、筋骨格系疾患が増加している。


    在外公館医務室と国内一般診療所外来における診療疾患の頻度2)はかなり異なっている。在外公館ではカテゴリーI、Xの頻度が高く、カテゴリーII(新生物)、IV(代謝疾患)、IX、XI(消化器系疾患)、XIV(腎尿路生殖器系疾患)の頻度は少ない。これは、一般診療所での外来患者の年齢層が高いことも影響していると思われる。

    疾患内訳を地域別に検討すると、アフリカ、アジア大洋州でカテゴリーIの頻度が有意に高く、先進国、中近東、ロシア・東欧で有意に低かった。また、先進国ではカテゴリーIV、IXの頻度が他の地域に比べ有意に高く、中近東ではカテゴリーVII(眼科疾患)、XIIIの頻度が有意に高かった。

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