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(1)インフルエンザウイルス抗原検出キットの実力 [特集:そこが知りたい! インフルエンザ検査]

No.4830 (2016年11月19日発行) P.28

原 三千丸 (原小児科院長)

高尾信一 (広島県立総合技術研究所保健環境センター)

登録日: 2016-11-18

最終更新日: 2016-11-15

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  • インフルエンザ流行期であっても,小児では他のウイルスにより,咳や鼻汁に高熱を伴う症状を呈する場合が多々みられる。問診と理学的所見からインフルエンザを診断することは不可能である

    イムノクロマト法による抗原検出キットを使用すれば,外来診療の場で,鼻汁を検体として短時間かつ簡単な操作でA型とB型を別々に検出できる

    優れたキットと適切な鼻汁検体を使用すれば,A型ウイルスに対する感度は90~95%である。ところが,いかなる方法を用いてもB型ウイルスに対する感度は90%未満である。優れたキットの特異性は,限りなく100%に近い

    1. 検査によって何がわかるか,その実力は?

    咳や鼻汁の症状が先行して高熱を伴う患者を診た場合,流行時であればインフルエンザ(以下,本症)を疑う。しかし本症以外でも,RSウイルス,ヒトメタニューモウイルス,ライノウイルスなどにより1),このような症状を呈する乳幼児には日常的に遭遇する。さらに本症では,発熱のみで発症する場合もみられるので,アデノウイルス,A群溶血性レンサ球菌などによる上気道感染症との鑑別も要する1)。流行期には,問診と理学的所見から発熱患児を本症と臨床診断することは容易ではないので,抗原検出キットの使用は不可欠である。
    現在,わが国で市販されている抗原検出キットのほとんどはイムノクロマト法を原理としており,1つのプレートあるいはスティック上で,鼻汁を検体としてA型とB型をそれぞれの陽性ラインで別々に検出できる。

    1 インフルエンザウイルス抗原検出試験

    筆者らは2009シーズンから2012/2013シーズン(4シーズン)に,イムノクロマト法キットであるクイックナビ™-Fluを用いた前方視的検討を行った(表1)2)3)。流行期間に検査を受けたすべての患児を対象に含め,鼻咽腔吸引液を検体とし,リアルタイムRT-PCRを基準として感度を算定した。4シーズンの累計で,クイックナビ™-Fluの感度は,A(H1N1)pdm09で88.0%(205/233),A(H3N2)で94.2%(344/365),そしてB型では79.3%(88/111)(P<0.01)という結果であった。



    さらに,筆者ら4)は2003/2004シーズンから2008/2009シーズン(6シーズン)に,エスプライン®インフルエンザA&B-Nを用いた前方視的検討を行った。6シーズンの累計によるキットの感度は,A(H3N2)が最も高く,季節性A(H1N1)がそれについだ。B型の感度が最も低く,90%を超えるシーズンはなかった。他からの報告でも,B型の感度はA型より低いとするものが多い5)。また,筆者ら3)は2012/2013シーズンに,リアルタイムRT-PCRによるA(H3N2)とB型検体のウイルスコピー数を定量した。結果,B型検体の平均コピー数はA(H3N2)よりも有意に低く,検体中のウイルス量が少ないことがB型検体の低感度の原因と結論した。 

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