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強まる健康の自己責任論 [お茶の水だより]

No.4829 (2016年11月12日発行) P.13

登録日: 2016-11-11

最終更新日: 2016-11-10

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▶元民放アナウンサーがブログで取り上げ、波紋を呼んだ人工透析患者の自己責任問題。「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担に」という内容に対し、全国腎臓病協議会が抗議文を出すなどブログが“炎上”した。今回は同氏が出演する全番組を降板する形で収束したが、各方面で健康に対する自己責任論は強まっていくだろう。
▶そんな折、与党自民党の若手議員が「人生100年時代の社会保障へ」という提言をまとめた。旗振り役を務めたのは小泉進次郎衆議院議員。提言の目玉は、医療介護の持続可能性を確保するために「健康ゴールド免許」制度の創設を盛り込んでいるところだ。自助を促すインセンティブを強化するため、健康診断を徹底し、早い段階から保健指導を受けるなど健康維持に取り組んできた人を「ゴールド区分」に位置づけ、医療費の自己負担割合を低く設定するという。提言では、現行制度について「健康管理をしっかりやってきた方も、そうではなく生活習慣病になってしまった方も、同じ自己負担で医療が受けられる」ため、インセンティブが十分とは言えないと指摘している。
▶自助を促すことは重要だが、「2014年国民健康・栄養調査」では、健康診断を受けていない人の割合は低所得者ほど高いことが明らかとなり、所得による健康格差の拡大を問題視している。また、低所得や低学歴など社会経済的要因が生活習慣病のリスク因子であるとの研究もある。ワーキングプアが社会問題化して久しいが、彼らは自分の健康に無責任なのではなく、“気を遣うゆとりが持てない”のだ。将来を担う若手議員がまとめた提言に、こうした思いやりの視点や最新エビデンスが欠けていることが残念でならない。

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