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ブドウ糖負荷試験の「食後」の範囲は?【ゆっくり食べる人をどう考えるか】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.63

加来浩平 (川崎医科大学総合内科学1教室特任教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-12-16

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【Q】

最近,食後血糖値と合併症との関連で糖尿病の診断に盛んに利用されるブドウ糖負荷試験では,確定診断に糖負荷後の2時間値が必須です。食後1時間あるいは2時間に採血し,血糖値を測ることが重要とされますが,この「食後」の定義を教えて下さい。
負荷試験のルールから考えれば,食事開始時間から1時間,2時間と考えて良いのでしょうか。そうであれば,食事を1時間以上かけて食べる人の場合,食事中でも食後と考えるのでしょうか。
(愛知県 N)

【A】

近年,食後高血糖と血管合併症,とりわけ動脈硬化性疾患との関連性が注目され,さらに最近では認知症との関連も取りざたされています。文献などでは,食後血糖を1時間値あるいは2時間値で表すことが多いため,上記のような質問がなされたのでしょう。
食後高血糖が問題視されるのは,食後の急峻な血糖上昇(グルコーススパイク)が酸化ストレスメカニズムの引き金となり,動脈硬化性病変を促進させる点にあります。食後血糖のピークは食後1時間程度でみられることが多いため,グルコーススパイクをとらえるわかりやすい指標として,食後1時間値が用いられています。
この食後1時間血糖値は,多くの場合,「食事負荷試験」を行った際のデータであると考えられます。すなわち,一定メニューの朝食を摂取してもらい,摂食開始から1時間目の採血で得た血糖値をもって食後1時間値としています。正確なデータ確保が求められる臨床試験などでは医療施設内で摂食してもらうため,食事にかける時間も計測できます。1時間以上かけて食べるような症例は含まれないのが前提です。
さて,一般外来における食後血糖値ですが,食事開始から1時間あるいは2時間といった一定時間での採血は,外来診療では事実上困難であると思われ,「食事開始から?時間」の血糖値をもって「食後血糖(?時間後)」という記載になるかと思われます。外来診療では,実際の測定値で食後血糖のピークを推測することになります。すなわち,食後2時間以上経過した血糖値が200mg/dLを超えているようであれば,血糖値のピークはそれ以上であることは間違いありません。
質問にある「食事に1時間以上かける患者さん」の外来での血糖測定値は,おそらく食後2?3時間のものになるかと思われますが,ゆっくり食べる,また最初に食物繊維を食べることなどにより,血糖のピークはかなり抑えられます。ゆっくりと時間をかけて食べること自体は有意義だと思いますが,摂取量が過剰にならないように留意も必要でしょう。

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