株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

月経困難症とトラニラスト 【CMの遊離抑制とEMT抑制により,諸症状の改善に効果】

No.4810 (2016年07月02日発行) P.50

本田律生 (熊本大学産科婦人科講師)

片渕秀隆 (熊本大学産科婦人科講師教授)

登録日: 2016-07-02

最終更新日: 2016-10-29

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

月経困難症における下腹部痛や腰痛などの疼痛はしばしば進行性で,その原因として子宮内膜症(EM)は重要である。近年,EMの発生や進展に関して,上皮細胞の性格から,高い運動能や組織接着能を有した間葉系細胞へ性格が変化する現象,すなわち上皮間葉転換(EMT)の関与が注目されている(文献1,2)。
慶應義塾大学先端医科学研究所の佐谷秀行教授との共同研究において,EMT抑制作用のある薬剤検索を目的に,細胞の線維化を再現するin vitroアッセイ系を樹立し既存薬剤を網羅的にスクリーニングした結果,トラニラスト(リザベンR)(以下,本剤)が抽出された。本剤は,ケミカルメディエーター(CM)の遊離抑制作用を有し,1982年以来,気管支喘息,アレルギー性疾患,ケロイド・肥厚性瘢痕へ適応疾患が拡大され,安全性の評価も高い。
筆者らは倫理委員会の承認のもと,EMを含む月経困難症患者に本剤を6カ月間投与し,月経困難症の諸症状の改善効果を確認した。EMの疼痛発生には,病巣周囲の線維化,神経線維増生と平滑筋攣縮の関与が推測されており,本剤は,疼痛を惹起するCMの遊離と,EMTを抑制することにより病態進行を抑制していると推察された。
本剤は卵巣機能に影響せず,投与期間の制限や休止は必要ない。現在,再発・再燃のないEM治療候補薬剤として,プラセボ対照無作為化二重盲検試験が進行中である。

【文献】


1) Matsuzaki S, et al:Hum Reprod. 2012;27(3):712-21.
2) Bartley J, et al:Arch Gynecol Obstet. 2014;289(4):871-81.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top