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体位性頻脈症候群(PoTS)と自律神経失調症  【PoTSとは,実質的には起立性調節障害のことであり,慢性疲労,睡眠障害,片頭痛など,多彩な機能性疾患が共存する】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.55

田村直俊 (埼玉医科大学短期大学教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-10-29

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体位性頻脈症候群(postural tachycardia syndrome:PoTS)とは,立ちくらみ症状に加えて,全身疲労感,睡眠障害,片頭痛様の頭痛など多彩な不定愁訴を呈し,起立試験またはhead-up tilt試験で著明な起立性頻脈を認める病態であり,女子中学生・高校生に好発する(文献1)。PoTSの用語は米国のSchondorf & Low(1992)によって提唱され,最近では日本においてもこの用語を冠した論文が急増しているが,実質的には小児科領域で1950年代から認識されてきた起立性調節障害(orthostatic dysregulation:OD)のことである。
ところで,第二次世界大戦前のドイツ語圏では,PoTS(OD)は自律神経失調症,すなわち「何らかの原因によって交感神経または副交感神経,あるいは,その双方が機能亢進を示す病態」の部分症状としてとらえられていた(文献2)。自律神経失調症を心身症とみなす見解には客観的・具体的な根拠がない。PoTS患者には慢性疲労,睡眠障害,片頭痛など,多彩な機能性疾患が共存することが知られており,自律神経失調症の本態を解明するためには,PoTSの共存症に大いに注目する必要がある。

【文献】


1) 田村直俊:Annual Review神経2011. 鈴木則宏, 他, 編. 中外医学社, 2011, p343-57.
2) 田村直俊:自律神経. 2015;52(1):2-5.

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