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がん教育の始動 【2017年度から小・中・高校のカリキュラムに編成。がんの原因,予防法などを授業で学ぶ】

No.4828 (2016年11月05日発行) P.52

中川恵一 (東京大学医学部附属病院放射線科准教授)

登録日: 2016-11-03

最終更新日: 2016-10-31

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わが国は男性の3人に2人,女性の2人に1人近くが,がんに罹患する「世界一のがん大国」である。毎年100万人近くががんと診断され,37万人もの人ががんで死亡しており,欧米では減少に転じているがん死亡数は,わが国では増え続けている。

わが国は「がん対策後進国」と言えるが,国民が「がんを知らない」ことが根本的な原因と考える。がんの予防や早期発見は,わずかな知識の有無が左右するほか,治療法の選択はまさに「情報戦」と言えるからである。実際,下げ止まりを見せる喫煙率,低いがん検診受診率,手術偏重のがん治療,緩和ケアの遅れなど,課題が山積している。

2007年に「がん対策基本法」が施行され,「10年でがん死亡率を20%削減する」という目標が立てられたが,現実には17%減にとどまる見通しで,追加措置として,15年末には「がん対策加速化プラン」が策定された。

こうした中で,文部科学省は14年に「『がん教育』の在り方に関する検討会」を立ち上げ,教材開発にあたるなど,がん教育の実施に向けて大きく舵を切った。17年度からは全国の小・中・高校で,保健体育を中心に,道徳や総合学習などの時間も使ったがん教育が始まろうとしている。

がんの原因,予防法,早期発見,治療法,緩和ケアなど教える内容は幅広いが,一番のポイントは「がんを理解することで命の大切さを学ぶ」ことである。がん専門医,学校医などが外部講師として授業を行うことも求められており,諸氏の協力をお願いするものである。

【解説】

中川恵一 東京大学医学部附属病院放射線科准教授

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