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リカバリー 【障害に伴う生活上の困難な状況から新たな価値観や生きがいを見出し,その人なりの生活を取り戻していく】

No.4807 (2016年06月11日発行) P.52

片桐直之 (東邦大学精神神経医学)

水野雅文 (東邦大学精神神経医学教授)

登録日: 2016-06-11

最終更新日: 2016-10-26

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リカバリー(recovery)の概念は1980年代に米国で生まれ,21世紀になってから欧米を中心に地域精神保健サービスの中心的な概念として広がりをみせた。今日では,わが国でも様々な専門職種間でその重要性が認識されており,精神障害者支援における国際的な潮流となっている。
精神疾患,特に統合失調症をはじめとする精神病は,思春期後期から青年期に発症することが多く,ともすれば退学や退職などで,これまで夢に描いていた目標をあきらめかけることも多い。時には長期にわたる療養生活の中で,受け身的な生活態度が身についてしまい,自分は病気だから仕方ないと,本人のみならず家族や周囲も消極的に考えがちとなる。
リカバリーとは,単に疾患からの回復をめざすだけでなく,障害に伴う生活上の困難な状況から新たな価値観や生きがいを見出し,その人なりの生活を取り戻していくことを意味している。すなわち,病前に期待された成果を追い求めるのではなく,今この状況における新たな生き方や視点を獲得することをめざす。
リカバリーは希望を持つことや社会的役割の再取得,意義ある人生の達成,他者とのつながりの再獲得などを含む幅広い概念であり,個々が希望する自分になるための「プロセス(回復過程)」と,その自分になった「アウトカム(結果)」の2つの側面を持つ。支援者や専門家の役割は,医学モデルを背景としたサービスを提供するという視点から,リカバリーを促す環境を提供する姿勢への転換が求められている。

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