株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

妊娠中の炎症性腸疾患患者の治療  【妊娠中であっても積極的に生物学的製剤による治療を行うことが重要】

No.4792 (2016年02月27日発行) P.50

長堀正和 (東京医科歯科大学消化器内科特任准教授)

登録日: 2016-02-27

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

炎症性腸疾患患者の約半数は女性であり,多くの患者が若くして発症することから,患者が妊娠した場合のマネジメントは重要である。従来,アザチオプリンや,妊娠中に安全に投与できるとされるメサラジンでさえも,妊娠を希望する女性患者への投与が避けられたり,中止されたりしていた。実際には,薬剤中止後に妊娠せずに疾患が増悪したり,また,妊娠中に悪化し,妊娠の継続が困難になることも経験される。妊娠中の薬剤の安全性に関しては,FDA pregnancy categoriesのlabeling(A,B,C,D,X)がその根拠とされてきたが,このlabelingは,臨床医の判断に必ずしも役立つとは言えず,廃止されている。
近年のいくつかの研究では,アザチオプリンやインフリキシマブなどの生物学的製剤は妊娠の転帰に影響を与えることがなく,最近ではアザチオプリン投与中の患者の妊娠の転帰は,内服しなかった患者と比較して,むしろ良好であったとの報告(文献1)もある。
一般的には,疾患の活動性は妊娠の転帰に影響を与えるとされており,妊娠中の患者においては寛解導入および維持のために積極的な治療を行うことが重要と考えられている。したがって,妊娠を考慮する時点で患者に十分な説明を行い,また妊娠中の治療についても,安易に薬剤を中止することなく,産科の担当医師と十分なディスカッションを行いながら,適切に治療を行うことが重要と思われる。

【文献】


1) Casanova MJ, et al:Am J Gastroenterol. 2013;108(3):433-40.

関連記事・論文

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top