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身体疾患と自殺 【がん告知後1年以内では自殺のリスクは20倍以上に】

No.4778 (2015年11月21日発行) P.49

吉岡英治 (旭川医科大学健康科学講座地域保健疫学 准教授)

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2016-10-26

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うつ病,アルコール依存症などの精神疾患だけではなく,様々な身体疾患も自殺のリスク因子のひとつであることが知られている。2009年に報告された自殺に関する総説(文献1)によると,これまで報告された自殺に関連する身体疾患として,悪性新生物(特に頭頸部癌),HIV感染,ハンチントン病,多発性硬化症,てんかん,消化性潰瘍,腎疾患,脊髄損傷,SLEなどが挙げられている。加えて,疼痛も自殺と関連していると指摘されている。
日本におけるこの分野の最近の知見としては,Yamauchiら(文献2,3)によるがん告知後および脳卒中発症後の自殺リスクの解析がある。これらの研究は,40~69歳の男女約10万人を約20年間追跡したコホート研究のデータを解析したものである。結果は,がんの告知後1年以内で自殺のリスクは20倍以上となるが,告知後1年以上ではがん患者でない者と比較して有意な自殺のリスクは認められなかったと報告されている。一方,脳卒中発症後5年以内で自殺のリスクは10倍となるが,発症後5年以上では発症していない者と比較して有意なリスクは認められなかったと報告されている。
自殺には,家族,職場環境,経済状況など様々な要因が影響しているが,重篤な身体疾患もその重要なリスク因子であることに留意しておく必要があるであろう。

【文献】


1) Hawton K, et al:Lancet. 2009;373(9672):1372-81.
2) Yamauchi T, et al:Psychooncology. 2014;23(9):1034-41.
3) Yamauchi T, et al:Psychosom Med. 2014;76(6):452-9.

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