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民間パイロットの年齢制限延長 【年齢制限延長による航空身体検査の変更点】

No.4777 (2015年11月14日発行) P.54

五味秀穂 (航空医学研究センター専務理事・所長)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-26

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民間航空のパイロット不足が叫ばれている。LCC(low cost carrier)の台頭により,また航空需要の増加により今後もこの傾向は続くであろう。これに対する国の施策としては,(1)外国人パイロットの採用,(2)年齢制限の延長,(3)パイロット養成機関の拡充,等である。この中で(2)の年齢制限の延長が2015年4月に行われた。
今まで日本において1種民間航空機パイロットの年齢制限は65歳未満であった。1993年に世界に先駆けて60歳未満を63歳未満に引き上げ(有償運航),同時に60歳到達時に全員に,(1)医師問診,(2)安静時心電図,(3)血清脂質検査,(4)トレッドミル負荷心電図,(5)ホルター心電図,(6)頭部CT,(7)心エコー,(8)呼吸機能検査,の8項目の付加検査を課すこととなった。その後,2004年に65歳未満まで引き上げられ,63歳時にも上記の(1)~(6)が課せられ,(6)が頭部MRIに変更となった。現在まで特に大きな問題はなく運用され,世界の航空界でもICAO(International Civil Aviation Organization)とFAA(Federal Aviation Administration)が,2007年に60歳未満から65歳未満まで通常の航空身体検査のみでの延長を行っている。
65歳以上の乗務を認めているのは現在オセアニアのみ(国内線)である。今回の延長に伴い付加検査も変更となり,60歳・63歳時に行っていた上記検査は,(1)~(7)を60歳・65歳時(63歳時は不要)に行い,65歳時には新たに脳波検査が追加された。なお,60歳時にはスクリーニング検査制度が導入され,血圧,血清脂質,心電図で基準を満たせば,(4)~(7)は省略されることとなっている。
始まったばかりの制度であるが,今後経過を注視し検討しながら進めていくことが必要である。

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