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糞便移植・腸管上皮再生など新たなIBD治療の試み

No.4770 (2015年09月26日発行) P.56

青松友槻 (大阪医科大学小児科)

玉井 浩 (大阪医科大学小児科教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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抗TNF-α抗体製剤インフリキシマブの登場により炎症性腸疾患(IBD)の治療は大きく変化し,難治例でステロイドの減量や離脱,粘膜治癒が可能となった。潰瘍性大腸炎では免疫調節薬タクロリムスが使用されるようになり,現在ではインフリキシマブやアダリムマブも保険適用となった。日本発の治療である血球成分除去療法は,近年,英文誌のレビューでも取り上げられている。このように,IBDの治療オプションは確実に広がっているが,効果や安全性の検証は追いついていない。
小児の場合,成人とは免疫学的背景もリスクとベネフィットの視点も異なるため,成人の知見をそのまま当てはめることはできず,慎重な判断が求められる。治療に関するトピックのひとつに糞便移植がある。ゲノムワイド関連解析の進歩により,IBDの発症や増悪に腸内細菌が深く関わっていることが明らかとなった。糞便移植は健常人から提供された糞便を患者の腸管内に移植し,腸内細菌叢の乱れを是正するものである。反復性クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療として開発されたが,IBDに応用する試みがなされている(文献1)。
基礎分野では,無血清で大腸上皮幹細胞の培養技術がわが国で確立され,大きな話題となった。体外で培養した大腸上皮幹細胞が傷害された粘膜を覆うように生着する実験結果が報告され,腸管上皮再生医療の実現に期待が集まっている(文献2)。今後も,基礎研究者と臨床医が互恵関係を構築しながら研究が発展することが期待される。

【文献】


1) Moayyedi P, et al:Gastroenterology. 2015;149(1):102-9.e6.
2) Yui S, et al:Nat Med. 2012;18(4):618-23.

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