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漏斗胸:手術治療の変遷

No.4754 (2015年06月06日発行) P.49

井上義一 (藤田保健衛生大学形成外科講師)

吉村陽子 (藤田保健衛生大学形成外科教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-26

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漏斗胸は胸部正中の胸骨が陥凹変形をきたす先天性疾患である。原因は肋軟骨の過形成など諸説あるがはっきりしておらず,陥凹変形の程度も様々である。心電図異常は高率に認めるが,圧迫による心機能異常やほかの臓器への影響はほとんどない。よって治療目的としては,形態の改善が主となる。
以前は胸部正中を大きく切開し,直接,肋軟骨や胸骨に切開を入れ,場合によっては摘出を行う侵襲度の高いRavitch法などの手術が中心であったが,1998年にNussにより報告されたNuss法が近年,主流となっている。
この手術は両側の側胸壁に切開線を置き,金属製のバーを胸骨裏面に通し,陥凹部分を持ち上げるものであるが,Ravitch法などと比較し,正中に長い切開線を置く必要がなく,整容的に優れているとともに,肋軟骨や胸骨に直接手を加えないため,低侵襲な手術として広まった。
しかし,当初発表されたNuss原法は胸腔内操作をブラインドで行うため,心血管損傷などのリスクが高かった。徐々に安全に配慮した方法に改良され,現在は胸腔鏡を使用し,剝離操作においては胸腔鏡用鉗子を用いる方法なども,施設によっては行われている。
また,初期の胸骨挙上用の金属バーはステンレス製のみであったが,アレルギーの問題などが懸念されるため,現在はチタン合金製のものも開発され,使用されている。

【参考】

▼ 野崎幹弘, 編:形成外科. 2010;53(9):937-94.

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