Ⅳ期非小細胞肺癌の薬物療法は,細胞傷害性抗癌剤がその中心を担ってきたが,2000年代以降になって分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)が登場し,患者背景により治療が細分化されるようになった。
特にICIは,腫瘍免疫における負の調節因子であるPD-1/PD-L1やCTLA-4などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬であり,ドライバー遺伝子変異/ 転座陰性肺癌治療の中心的役割を担っている。
進行非小細胞肺癌の治療法は全身状態,主要臓器機能,社会的背景を考慮し,臨床病期,組織型,ドライバー遺伝子の有無,PD-L1免疫染色による腫瘍細胞の陽性率(tumor proportion score:TPS)により基本的な治療方針が決定される。
「ドライバー遺伝子変異/転座が陽性であるかどうか」が治療方針を決める第一歩である。
ガイドラインにおけるドライバー遺伝子変異/転座は,現時点で治療標的となる薬剤が承認されている以下の遺伝子異常(EGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子,NTRK融合遺伝子,KRAS遺伝子変異,HER2遺伝子変異)と定義されており,陽性であった場合には各ドライバー遺伝子に対する分子標的治療が推奨される。
一方,ドライバー遺伝子変異/転座が陰性であった場合,合併症などでICIを避けるべき症例を除き,原則としてICIを含む治療を検討する。治療法を決定/選択するにあたっては,PD-L1検査を行うことが有用である。腫瘍細胞におけるPD-L1発現率によってICIの効果が異なるため,①PD-L1 TPS 50%以上,②PD-L1 TPS 1~49%,③PD-L1 TPS 1%未満の3つのサブグループに分類して治療方針を検討する。
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