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アンドロゲン低下とインスリン抵抗性

No.4751 (2015年05月16日発行) P.48

千丸貴史 (京都府立医科大学内分泌・代謝内科)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-26

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昨今の人口の高齢化に伴い中高年男性の生活の質(QOL)が問われており,男性更年期障害や加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)といった概念が医療のテーマとして注目されている。
加齢に伴うアンドロゲン低下は,糖尿病やメタボリックシンドローム,さらに心血管イベント発症に関与することが,筆者ら(文献1)の施設をはじめ国内外において示されている。機序としてはアンドロゲン低下によるインスリン抵抗性増大が示唆されているが,詳細な分子機構は不明な点が多い。
筆者ら(文献2)は精巣摘出マウスを用い,アンドロゲン低下が肝臓における脂質/リポ蛋白質代謝関連遺伝子発現異常を介して脂肪肝を惹起し,インスリン抵抗性増大の一因となることを報告した。また臨床の場では,アンドロゲンの低下している糖尿病患者に対するアンドロゲン補充療法によるインスリン抵抗性改善効果や,動脈硬化進行予防効果についての調査を進めている。最近のメタ解析によると,アンドロゲン補充療法は体重,体脂肪を減少させ,空腹時血糖,HbA1c,LDLコレステロール,中性脂肪,血圧を低下させ,骨塩量を増加させ,うつや勃起障害を改善したと報告(文献3)された。
今後も超高齢社会の進行が不可避であり,高齢者のQOL維持のため,アンドロゲン低下とインスリン抵抗性に関する,さらなる基礎・臨床研究が必要と考えられる。

【文献】


1) Fukui M, et al:Diabetes Care. 2003;26(6):1869 -73.
2) Senmaru T, et al:Metabolism. 2013;62(6):851-60.
3) Corona G, et al:Expert Opin Pharmacother. 2014; 15(13):1903-26.

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