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血清脂質管理のガイドライン:最近の話題

No.4713 (2014年08月23日発行) P.53

永島秀一 (自治医科大学内分泌代謝学教授)

石橋 俊 (自治医科大学内分泌代謝学教授)

登録日: 2014-08-23

最終更新日: 2016-10-26

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まず,動脈硬化性疾患予防ガイドラインが2012年に改訂されたので,主な改訂点を紹介したい(文献1)。(1)脂質異常症の治療目標は心血管イベント発症リスクの軽減であり,脂質異常症の正常化ではない。一方,境界域の高LDL-C血症であっても併存症のリスクが高い場合は早期の治療介入が必要となる。また,LDL-C値の測定は直接法が普及しているが,精度などに問題が多いため,原則としてLDL-CはFriedewald式(TC―HDL-C-TG/5)で算出した値を用いる。TGが400mg/dL以上や食後採血の場合はnon HDL-C(TC―HDL-C)を使用し,その基準値はLDL-C+30mg/dLとされた。(2)一次予防患者でのリスクの層別化は,従来の相対リスクではなく絶対リスク評価に基づくため,チャート参照の必要がある。(3)高リスク病態として糖尿病が強調され,また新たにCKDが高リスク病態に加えられた。家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)は,頻度の高い遺伝性疾患できわめて高リスクであるが,HeFHと診断されないままスタチン治療が導入され,さらに診断を難しくしている場合が少なくない。そこで,「原発性高脂血症」とは別項目扱いとして注意喚起が図られた。
次に2013年,米国で公表されたガイドラインでは,独自のリスク算出式で薬物療法の対象患者を選定し,スタチン以外の薬物ではエビデンスが劣るとされた(文献2)。スタチン適応患者の大幅な増加が見込まれるが,その妥当性について議論がある。

【文献】


1) 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版. 日本動脈硬化学会, 2012.
2) Stone NJ, et al:J Am Coll Cardiol. 2014;63(25 Pt B):2889-934.

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