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大阪府内における被虐待児の社会的入院の現状と課題 【OPINION】

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  • Ⅲ.2次調査

    1.対象と方法
    対象は1次調査で「社会的入院の経験がある」と回答した31施設である。

    2016年3月に1次調査で回答した症例についての質問紙を郵送し、2週間以内に回答を求め、同封の切手付封筒で大阪小児科医会事務局宛に返送を求めた。返送数は15(返却率48.4%)であった。

    なお、調査の実施にあたり、関西医科大学附属滝井病院院内臨床研究審査委員会にて、調査の実施の適否に関して倫理的、科学的及び医学的妥当性の観点から審査を受け、承認を得た(承認番号27-16)。
    2.質問項目
    症例の年齢、性別、居住地域、通告の有無と虐待の種類、児童相談所の介入・一時保護・要保護児童対策地域協議会(要対協)関与の有無、入院期間と社会的入院期間、児童相談所の介入から退院までの期間、最初の入院理由、社会的入院が長引いた理由、病院の外部で患者にかかわった機関、治療後後遺症の有無と重症度、退院後の処遇、経過について、選択肢もしくは記述式の回答を求めた。
    3.結果と考察
    ①「保護者の養育力不足」症例
    回答は76症例で、男35、女41と性差はなかった。年齢では乳児院入所対応となる2歳未満は56.7%、2~7歳未満は19.7%と、合わせて全体の4分の3を占めるが、15歳以上も3名あった。77.6%で通告が行われ、90.8%で児童相談所の介入があり、半数が一時保護されていた。虐待の種類では「ネグレクト」が多く、社会的入院の期間は10日未満が15名(19.7%)であり、5分の4は10日以上、1年以上が3名あった。

    最初の入院理由は「内科的問題」と「保護者の病気・都合」が多かった。社会的入院が長引いた理由は、「行政機関の調査に時間がかかった」「入所施設(乳児院・児童養護施設)に空きがない」「児童相談所は帰すように指示するが病院が帰せないと判断した」が多かった。退院後の処遇は「自宅」が39.5%、「乳児院」と「児童養護施設」が合わせて36.8%と多く、「転院」も5名あった。退院後の経過は「不明」が最も多く、「経過良好」は30.3%、「虐待継続」は15.8%であった。

    養育力不足でも多くの場合通告が行われ、児童相談所が介入しており、半数で一時保護されているという結果から、病院が独自で入院を継続しているのではなく、児童相談所が関与していた。また入院は幅広い年齢層にわたり入院当初から保護者に理由があることが多かった。退院後は3分の1が乳児院・児童養護施設に入所しており、施設の空き待ちが社会的入院の大きな原因と推察された。
    ②「虐待の後遺症」症例
    回答は17症例で、男13、女4と男が多かった。年齢では1歳未満が10名(58.8%)であったが、乳児から15歳の広い年齢層にわたっていた。虐待の種類は「身体的虐待」が12名と最も多く、最初の入院理由が「外科的問題」であることと併せて、虐待行為により重症をおって入院し、後遺症が残り退院できなかったと推察された。ほとんどの例で児童相談所が介入、一時保護していた。社会的入院が長引いた理由は、「行政機関の調査に時間がかかった」「入所施設(乳児院・児童養護施設、重症心身障害児施設)に空きがない」が多かった。退院後の処遇は「自宅」が4名、「乳児院」が6名であった。退院後は「経過良好」が5名あったが、「退院できない」者が3名、「虐待継続」が2名、「再入院」が1名、「死亡」が1名と良くない経過が7名あり、経過良好を上回っていた。

    ①②を通じた自由記述では、「母の精神疾患・知的問題(母親の知的障害、精神疾患、未受診)」「保護者の受け入れ不良(児の外表奇形、染色体異常)」「身体疾患を基礎に有する」といった場合に問題が多いことがあげられた。

    Ⅳ.結語

    大阪府では医学的には入院の必要がないのにもかかわらず保護者の問題や家庭の事情、虐待の後遺症などにより退院できない子どもの社会的入院が少なくないことが明らかとなった。厚生労働省は「児童相談所運営指針の改正における医療機関での一時保護の位置づけについて」3)において「一時保護については、ア)管轄する一時保護所における適切な援助の確保が困難な場合には、他の都道府県等の管轄する一時保護所を一時的に活用するといった広域的な対応や、イ)児童福祉施設、医療機関等に対する委託一時保護の活用等により、適切な援助の確保に努めることが重要である。」と述べている。この解決に向けて、厚生労働省等と大阪府内の関連各所が協力して対策を考案することを切に要望する。

    【文献】

    1) 厚生労働省:2015年度児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値) [http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000132381.html]

    2) 畑農鋭矢:医療経済研究.2004;15:23-35.

    3) 厚生労働省:児童相談所運営指針の改正における医療機関での一時保護の位置づけについて.
    [http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-soudanjo-kai-honbun.html]

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