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大阪府内における被虐待児の社会的入院の現状と課題 【OPINION】

No.4826 (2016年10月22日発行) P.18

登録日: 2016-11-29

最終更新日: 2016-11-29

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  • Ⅰ.調査の背景と目的

    1.背景
    児童虐待は年々増加の一途にあり、2015年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は10万件を超えた1)。大阪府は児童虐待の通告件数が全国一多く、小児科医は、子どもを保護する施設が少なく保護すべき事例の数に対応できないこと、そしてそのしわよせとして子どもの『社会的入院』が増えていることを問題視している。社会的入院とは元来精神科や高齢者医療における用語であり、医学的には入院の必要がないのにもかかわらず入院を継続し、医療資源を浪費し医療費を高騰させる主因とされてきた2)。大阪府では近年、保護者や家庭の事情、さらには虐待の後遺症などの理由により退院できない子どもたちの社会的入院が増加しており、急性疾患の入院受け入れに影響すると危惧されている。また医療機関はそのような子どもの成長にふさわしい養育環境とは言えず、早急に対応を講じる必要がある。
    2.子どもの社会的入院の位置づけ
    子どもの社会的入院には明確な定義も統計もない。一般社団法人大阪小児科医会被虐待児養育環境問題検討委員会では、委員の経験した症例を会議で検討し、子どもの社会的入院は、①医学的な理由が乏しいにもかかわらず家庭環境のために医療機関に入院している「保護者の養育力不足」の場合(例:ネグレクトや養育不全で家に帰せないが、入所させる施設が満員のため病院から退院させられない)と、②虐待により重度の心身の後遺障害をきたして医療的ケアを必要とし、受け入れ先がなく入院が延長している「虐待の後遺症」による場合(例:重症心身障害児施設の入所待ちが長期に及ぶ)とに大別することが妥当であるとした。期間は、通告後に児童相談所の調査と手続きに一定の時間が必要であることを考慮して、事務上の手続き等で2、3日入院期間が延長する例は省くこと、すなわち医学的には入院の必要性がないのにもかかわらず、4日以上の入院が継続されているものとした。
    3.目的
    大阪府における子どもの社会的入院の実態について明らかにし、担当行政へ働きかけて社会施策の推進の資料とすることである。

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