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子宮腺筋症の治療

No.4728 (2014年12月06日発行) P.66

北脇 城 (京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学教授)

登録日: 2014-12-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

小児頭大に腫大する子宮腺筋症を認める未経産の39歳,女性。月経痛がきわめて強く,前医で投与された低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin:LEP)の効果も不十分。現在,挙児希望はないが,将来的には可能性を残しておきたいと述べています。ほかのホルモン製剤による治療は可能でしょうか。可能な場合,どれくらいの期間継続できますか。無効の場合はほかにどのような治療法があるでしょうか。京都府立医科大学・北脇 城先生のご回答をお願いします。
【質問者】
甲村弘子:大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科教授

【A】

子宮腺筋症には子宮の全周性に病巣が存在するタイプと局所性に腫瘤を形成するタイプとがあり,子宮内膜症や子宮筋腫を合併する例も多くあります。症状も,過多月経やそれに伴う貧血をきたす例もあり,これらを勘案して治療方針を決定します。約20%の子宮腺筋症は未妊婦に発生することから,不妊をきたす例も相当数存在しており,挙児希望例の治療は苦慮するところです。
LEPは,月経痛の緩和と経血量減少効果に優れていますが,そのほかの慢性骨盤痛緩和効果は弱く,病巣縮小作用はほとんどありません。LEPに替わる内分泌療法としては,本例のほかの諸条件が不明なため決定版ではありませんが,ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hor-mone:GnRH)アゴニスト(GnRHa)先行投与法を第一に考慮したいところです。
これは,通常通りGnRHaを4~6カ月投与した後に,引き続きジエノゲスト1または2mg/日を投与する方法です。GnRHaには強い疼痛抑制効果とともに腺筋症病巣の縮小効果があることがほかの薬剤にはない利点です。低エストロゲンに起因する副作用のため6カ月を限度として中止する必要がありますが,その後,無投薬とするとほとんどが再発します。そこでGnRHaに引き続いてジエノゲスト,低用量ダナゾール,あるいはLEPを投与します。この方法により数年以上にわたって症状を抑制・維持できる確率が高くなります。
ジエノゲスト単独投与は,疼痛抑制効果は優れていますが,病巣縮小効果が弱いことと,不正出血の副作用があることが懸念点です。子宮腺筋症では大量子宮出血をきたした例が稀に報告されているので注意が必要です。過多月経が主症状であれば,レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム(levonorgestrel-releasing intrauterine system:LNG-IUS)は局所のみに作用して全身への影響がほとんどないことから,簡便かつ有用な治療法です。
最後に,薬物療法だけでは十分な効果が得られない場合や,現実に妊娠をめざす場合には,子宮腺筋症切除術も考慮すべき治療法です。

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