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思春期女性へのホルモン製剤の 使い方

No.4725 (2014年11月15日発行) P.57

甲村弘子 (大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科人間栄養学専攻教授)

登録日: 2014-11-15

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

15歳の女子中学生が月経不順で来院しました。月経は4~6カ月に1回という状況。妊娠は否定され,やせや肥満は認めていません。ホルモン製剤を使って治療したいのですが,どのような製剤をどう使えばよいでしょうか。思春期女性のホルモン製剤の使い方について,大阪樟蔭女子大学・甲村弘子先生のご回答をお願いします。
【質問者】
安井敏之:徳島大学大学院生殖補助医療学分野教授

【A】

思春期の月経不順(続発無月経)では,ダイエットなど体重減少によるもの(体重減少性無月経)が最も多く,ストレスや過度な運動によるもの,多嚢胞性卵巣症候群によるものもよくみられます。すなわち,ほとんどは視床下部性の無月経ですが,注意深い問診と身体所見の観察,内分泌学的検査〔卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hor-mone:FSH),黄体化ホルモン(luteinizing hor-mone:LH),プロラクチン(prolactin:PRL),エストラジオール,テストステロン〕などを系統立てて行い,病態を診断します。
治療的診断として,まずゲスターゲン(黄体ホルモン)製剤を内服させます(ゲスターゲンテスト)。処方例としては,デュファストンR錠(5mg)1回1錠,1日2回食後,5~7日間です。ゲスターゲンテストにより消退出血があれば第一度無月経と判定し,以後周期の21日目から黄体ホルモン製剤を投与するホルムストローム療法を行います。変法として,性腺機能の回復を待ちながら約45日間様子をみて,消退出血の45日目から服用するホルムストローム変法を行ってもよいでしょう。第一度無月経は視床下部の軽度な機能障害によるものの場合が多くあります。
このような第一度無月経では,子宮内膜は持続的なエストロゲン刺激下に置かれて黄体ホルモン刺激を欠いた状態となっています。長期にわたれば将来的に子宮内膜増殖症や子宮内膜癌発生のリスクが生じるため,子宮内膜保護の目的で周期的な消退出血を起こす必要があるのです。
ゲスターゲンテストで消退出血がみられない場合はエストロゲン─ゲスターゲンテストを行い,消退出血がみられれば第二度無月経と診断します。第一度無月経に比べ血中エストロゲンは低値で,より重症な無月経と言えます。視床下部─下垂体─卵巣のいずれの部位の障害でも起こり,神経性食欲不振症,運動性無月経などにみられます。
第二度無月経に対しては,エストロゲンとゲスターゲンの併用によるカウフマン療法を行います。処方例を記します。
(1) プレマリンR錠(0.625mg)1回1~2錠,1日1~2回食後,21日間。デュファストン錠(5mg)1回1錠,1日2回食後,12日間を周期の後半に併用。
(2) エストラーナRテープ(0.72mg)2日ごとに貼り替え,21日間。デュファストン錠(5mg)1回1錠,1日2回食後,12日間を周期の後半に併用。
カウフマン療法を3クール程度施行後,ゲスターゲンテストを行い,無月経の程度が改善したかどうか確かめ,より軽い治療法へ移行します。改善がみられなければカウフマン療法を継続します。
カウフマン療法の代わりにルナベルR配合錠やヤーズR配合錠などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin:LEP製剤)を用いてもよいとされています。
第二度無月経では低エストロゲン状態が長期に続くと骨量減少をきたして将来の骨粗鬆症が憂慮されます。この意味からもエストロゲンの補充は重要です。

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