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在宅医療でのリハビリテーション栄養実践

No.4721 (2014年10月18日発行) P.60

若林秀隆 (横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)

登録日: 2014-10-18

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

在宅医療の対象となる障害者や高齢者では,ADLの低下に対しリハビリテーション導入を考えますが,同時に低栄養・サルコペニアを認める場合,栄養管理を含め評価・計画する「リハビリテーション栄養」の考え方が重要と学びました。在宅医療の現場で,どのようなツールを使ってどのようなチームで行っていくことが可能でしょうか。横浜市立大学附属市民総合医療センター・若林秀隆先生にご回答をお願いします。
【質問者】
紅谷浩之:オレンジホームケアクリニック

【A】

リハビリテーション(以下,リハ)栄養とは,栄養状態も含めて国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disabillity and Health:ICF)で評価を行った上で,障害者や高齢者の機能,活動,参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うことです。スポーツ栄養のリハ版と言えます。ADLの低下した障害者や高齢者では,多くの人に低栄養とサルコペニアを認めます。
最初に在宅で低栄養とサルコペニアの有無を評価します。低栄養の評価には簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment-Short Form:MNAR-SF,http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf)が有用です。過去3カ月間の食欲不振・消化器系の問題(咀嚼・嚥下困難などによる食事量減少),過去3カ月間の体重減少,自力歩行能力,過去3カ月間の精神的ストレスや急性疾患の有無,神経・精神的問題の有無,BMIの6項目で低栄養の有無を判定します。
サルコペニアは,筋力低下(握力:男性26kg未満,女性18kg未満)もしくは身体機能低下(歩行速度0.8m/秒未満)を認め,筋肉量減少も認めた場合に判定します。筋肉量減少の目安は,BMI 18.5 kg/m2未満もしくは下腿周囲長(左下腿の最も太い場所の周径)30 cm未満です。握力計,ストップウォッチ,メジャーでサルコペニアの評価が可能です。サルコペニアの原因には加齢,活動(廃用),栄養(飢餓・食事摂取量不足),疾患(急性疾患・侵襲,慢性疾患・悪液質,神経筋疾患など)の4つがあります。サルコペニアの原因によって適切な対応が異なり,リハ栄養の考え方が有用です。
在宅では低栄養だから訪問栄養指導,サルコペニアだから訪問リハというわけにはいかないことがあります。管理栄養士やリハスタッフがいなくても,2職種以上で「リハからみた栄養」と「栄養からみたリハ」の両者を考えることが重要です。MNAR -SFによる栄養評価とサルコペニアの評価はどの職種でも評価する気になれば可能です。2職種以上で栄養とリハの立場にわかれて話し合えば,リハ栄養の問題に気づきやすくなります。
リハ栄養の実践が難しい場合には,日本リハビリテーション栄養研究会への入会をお勧めします(https://sites.google.com/site/rehabnutrition/)。2014年4月現在の会員数は約3400人。入会費,年会費無料ですが,ホームページでの入会手続きとFacebookのアカウントが必要です。入会すればFacebookの日本リハ栄養研究会グループに登録され,リハ栄養への質問を投稿できます。秘密のグループに設定しているため,入会しない限りグループの存在や内容を検索できません。Facebookを活用して在宅でリハ栄養を実践することが可能と考えます。

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