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大腸内視鏡における鋸歯状病変を示す過形成ポリープの取り扱い

No.4719 (2014年10月04日発行) P.59

山野泰穂 (秋田赤十字病院消化器病センター消化器内科第二消化器内科部長)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-11-09

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【Q】

大腸内視鏡を行うとしばしばポリープに遭遇します。そのポリープの大半は腫瘍の腺腫性ポリープか非腫瘍の過形成ポリープです。最近は拡大機能を装備した内視鏡でポリープ表面の構造(ピットパターン)を観察することにより,生検なしに質的診断が可能となりました。この段階で,腺腫性ポリープは切除,過形成ポリープは経過観察,との大まかな方針が決定します。
最近,この過形成ポリープの中にも癌化する病変があることが指摘され,またsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)と表現される疾患概念も登場しました。臨床的には,右側結腸に存在する10mm以上の,いわゆるlarge hyperplastic pol-ypが,このSSA/Pに該当する可能性があることが指摘されています。このために,この病変群は,最近は内視鏡治療の対象としたほうがよいと判断されるようになってきました。
一方,直腸,S状結腸にも時に10mm程度の大きな過形成ポリープを認めます。これは右側結腸に存在する同じような病変と同様に癌化のポテンシャルを持つのでしょうか。この病変群は切除すべきなのか,フォローアップでよいのか,秋田赤十字病院・山野泰穂先生のご教示をお願いします。
【質問者】
坂下正典:坂下内科消化器科院長

【A】

大腸鋸歯状病変に関しては1990年,Long-acreら(文献1)によりそれまで過形成性病変とされてきた病変群の一部において鋸歯状腺管構造に腺腫性細胞異型のある病変の存在が指摘され,鋸歯状腺腫(serrated adenoma)が提唱されたことに始まります。2003年,Torlakovicら(文献2)により構造異型を有する病変をSSA/Pとして分派し,それ以外をtraditional serrated adenoma(TSA)とするなどの変遷を経過し,2010年のWHO分類では表1のようにまとめられています。この中で近年の遺伝子学的検討により,SSA/Pに対してmicrosatellite instability(MSI)陽性大腸癌の前駆病変とするserrated pathwayが提唱(文献3~7)されたこともあり,大腸鋸歯状病変全体が大いに注目されています。
さて,ご質問の臨床現場でのSSA/Pの拾い上げや取り扱いですが,まだ確定的なお答えができないのが正直なところです。ただ,私たちが大腸鋸歯状病変に対して拡大内視鏡所見に基づいた病理診断,遺伝子解析を行うtranslational researchを実施した結果では,拡大内視鏡所見で開大したⅡ型pit pattern(開Ⅱ型)を呈する病変が組織学的,遺伝子学的にもSSA/Pと診断することが可能であること,表面構造の一部に開Ⅱ型以外の構造を伴うものがSSA/P with cytological dysplasiaの可能性があり,特にⅤⅠ型pit patternを示す病変は遺伝子変化ならびに組織学的に癌化を示すことがわかりました(文献8,9)。また,少数例の検討ではありますが,癌化症例は全例右側結腸に存在していました(文献10)。腫瘍径が大きい病変で癌化する可能性を指摘する論文もありますが,私たちの検討では腫瘍径との相関は認められませんでした。
以上より,現状では拡大内視鏡を用いることでSSA/Pを指摘でき,右側結腸に存在し開Ⅱ型以外の構造を伴うものを切除対象とすべきではないかと考えています。ただし,開Ⅱ型を示さないSSA/Pもわずかながら存在すること,1年ほどの経過で急激に変化する病変も経験しており,慎重な経過観察が必要であるとも考えており,その旨を患者さんにも説明しています。
SSA/Pも含めた大腸鋸歯状病変に対する検討はまだ途に就いたばかりですので,今後もさらに症例を蓄積して検討を積み重ねることが重要であり,個人的には「SSA/Pすべてを前癌病変として全例切除対象」とするのは早計ではないかとも考えています。

【文献】


1) Longacre TA, et al:Am J Surg Pathol. 1990;14 (6):524-37.
2) Torlakovic E, et al:Am J Surg Pathol. 2003;27 (1):65-81.
3) Jass JR:Dis Colon Rectum. 2001;44(2):163-6.
4) Jass JR:J Pathol. 2001;193(3):283-5.
5) Jass JR:Histopathology. 2007;50(1):113-30.
6) Makinen MJ:Histopathology. 2007;50(1):131-50.
7) Toyota M, et al:Proc Natl Acad Sci U S A. 1999; 96(15):8681-6.
8) 木村友昭, 他:胃と腸. 2011;46(4):418-26.
9) Kimura T, et al:Am J Gastroenterol. 2012;107 (3):460-9.
10) 山野泰穂, 他:胃と腸. 2012;47(13):1955-64.

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