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高齢糖尿病患者の治療目標と薬物療法上の注意点

No.4710 (2014年08月02日発行) P.62

能登 洋 (国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科医長、東京医科歯科大学医学部臨床教授)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-11-09

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【Q】

近年,認知症を合併しているなどの理由で治療に難渋する高齢糖尿病患者をしばしば経験します。高齢糖尿病患者の治療は,どのように考えればよいでしょうか。治療目標の設定および薬物療法上の注意点について,エビデンスを含めて,国立国際医療研究センター病院・能登 洋先生に。
【質問者】
村田 敬:国立病院機構京都医療センター糖尿病センター

【A】

糖尿病の診療目的は,糖尿病合併症の発症・進展を防止し,生活の質(QOL)の維持と健康寿命の確保をすることであり,単に血糖値をコントロールすることではありません。
高齢糖尿病患者を対象とした合併症予防や治療リスクを評価したエビデンスは現時点ではありません。そのため低血糖の回避とQOLの維持が診療の主要目標となります。特に認知症を合併している場合は,誤服用による低血糖のリスクに気をつけなければなりません。また,高齢者は多剤服用していることが多いため「薬漬け」によるQOL低下も考慮することが重要です。
具体的な血糖コントロール目標値は,治療に伴うリスクやQOLなどの要因の有無を参考にして個別設定することが推奨されています(表1)。
治療薬物は副作用・アドヒアランスを重視して選択します。ビグアナイド薬は乳酸アシドーシスのリスクが高まるため,75歳以上には投与しません。スルホニル尿素薬やグリニド系薬は低血糖のリスクが高まるため,少量の投与にとどめます。α-グルコシダーゼ阻害薬は安全ですが,毎食直前服用のため,アドヒアランス低下につながる可能性があります。DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬は低血糖のリスクが低く,服用回数も少ないので,推奨度が高いでしょう。チアゾリジン薬は低血糖のリスクは低いのですが,心不全増悪や骨折のリスクを高めるので適応症例は限定的です。SGLT2(sodium glucose transporter 2)阻害薬は低血糖のリスクが低く服用回数も少ないのですが,高齢者では脱水や低血圧のリスクが高まるので推奨度は低いでしょう。インスリンやGLP-1(glucagon-like peptide-1)アナログ製剤はQOLやアドヒアランスを特に重視して選択する必要があります。
糖尿病に限ったことではありませんが,「治療の対象は検査値でなく患者である」ことや“First, do no harm”(安全第一)をあらためて肝に銘じ,患者やその家族と協働判断をしましょう。

【文献】


1) 国立国際医療研究センター病院:糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・クリニック向け).
[http://ncgm-dm.jp/center/diabetes_treat ment_manual.pdf](約半年ごとに改訂)

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