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医師が自己の処方せんの薬剤師の署名欄に署名対応することは可能?

No.4804 (2016年05月21日発行) P.64

三輪亮壽 (三輪亮壽法律事務所 弁護士)

登録日: 2016-05-21

最終更新日: 2016-10-21

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【Q】

当院では,当直時間帯に外来受診した患者に対して調剤が必要となった場合,医師が自ら処方した処方せんの薬剤師の署名欄に自分で署名をして対応していますが(当院の場合,当直薬剤師は,宅直となっている),違法でしょうか。また,各病棟の当直医が処方した調剤についてほかの医師が署名した場合は,適法ですか。
(岐阜県 K)

【A】

質問には「処方せん」とありますが,いわゆる「処方せん」には,「院外処方せん」と「院内処方せん」とがあります。法律的に厳密に言うと「院外処方せん」が本来の「処方せん」となるのですが,今回の質問のように,現実面では区別はあいまいなようです。そのあたりを考慮しながら,以下の通り回答します。
法律上,医師が適法に調剤できるのは「自己の処方せん」による場合に限ります。詳しくは,以下の通りです。
(1)医師が自ら処方した処方せんの薬剤師署名欄に自分で署名をしてもよいか
調剤は原則的に薬剤師の独占業務とされています(薬剤師法第19条本文)。ただし,一定の場合に例外的に医師に対して「自己の処方せんによる調剤」を認めています(同条但書)。
この一定の場合には2つあります。
1つ目は「患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合」です。
2つ目は医師法第22条または歯科医師法第21条に規定された次の1号から7号までの場合です。
1号:暗示的効果を期待する場合
2号:不安を与える場合
3号:病状の短時間の変化に即応する場合
4号:診断や治療方法の未決定の場合
5号:安静を要する患者以外に薬剤の交付を受ける人がいない場合
6号:覚せい剤を投与する場合
7号:薬剤師が乗り組んでいない船舶内で薬剤を投与する場合
以上の条件に合っている場合ならば,質問の前半は適法です。
(2)各病棟の当直医が処方した調剤にほかの医師が署名した場合
医師が調剤できるのは,回答の前半で示した通り,「自己の処方せんによる調剤」の場合に限りますので,自分自身が調剤しなければなりません。
したがって,各病棟の医師の処方せんにより別の医師が調剤する場合は違法になりますが,各病棟の医師が自分自身で調剤するならば適法です。

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