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医者と患者と年齢と[プラタナス]

No.4790 (2016年02月13日発行) P.1

外山 学 (益田診療所副院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 私が40代になったばかりの頃、高血圧症で通院中の80代前半の女性Yさんに、定期検査で貧血が認められた。便潜血が陽性だったので近くのK病院に紹介したが、消化管の検査は拒んだため、鉄剤を用いての経過観察となった。

    約1年の間、目立った症状はないまま経過した。何度となく説明して消化管検査を勧めたが、本人は「歳だから」と拒み続けた。同居の息子とその妻も当院に通院していたので、Yさんの承諾を得て説明し、家族で話し合うことも勧めたが、Yさんの意思が強いので、それにゆだねるとのことであった。

    その後、体重減少が進行し嘔気が増悪、食事が十分できなくなってきたところで「つらくない検査だけなら」と受け入れた。K病院での造影CTで、右側大腸癌(写真右)の多発肝転移が強く疑われ、多量の腹水も認められた(写真左)。若い時に大病で命を落としかけたとのことで、その後は「おまけの人生だから」と言っていたが、このときばかりは「写真を見せられてショックだった」と仰った。化学療法を勧められ「しなければならないかな……」との気持ちになったが、2回で治療を断った。

    3週間後、痛みと嘔気が強まり入院を希望した。K病院での疼痛コントロールが奏効し、1週間で安らかに永眠された。結局、腸の検査は最後まで受けなかった。

    残り500文字あります

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