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血中食物抗原特異的IgG抗体検査と抗原特異的IgE抗体検査

No.4767 (2015年09月05日発行) P.65

藤澤隆夫 (国立病院機構三重病院院長/ 日本小児アレルギー学会理事長)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,日本アレルギー学会が血中食物抗原特異的IgG抗体検査を食物アレルギーの原因食品の診断法として推奨しない旨の見解を出しました。これと抗原特異的IgE抗体検査(RAST)は異なるものですか。 (青森県 N)

【A】

食物に対する抗原特異的IgG抗体産生は「正常の」免疫反応であり,食物アレルギーとは無関係に健常者にも存在するため,わが国だけでなく,米国や欧州のアレルギー学会でも,診断法としては公式に否定されています。しかし,測定すれば何らかの陽性反応が出ることより,食物アレルギーだけでなく自閉症など根治療法がない様々な疾患に悩む患者を相手に当該検査を行い,根拠なく食事療法を推奨して標準的治療から遠ざけている実態があるので,学会としても注意を喚起したという経緯があります。
一方,食物抗原特異的IgE抗体はその食物に「感作」されている(アレルギー反応として)ことを示しています。しかし,「感作」と症状誘発は必ずしも一致しません。すなわち,抗原特異的IgE抗体が陽性であっても,食物を摂取して症状がないことが少なくないのです。したがって,IgE抗体検査陽性のみで,摂取による明らかな症状がみられないのであれば,除去を指示すべきではありません。
診断の基本は十分な病歴聴取ですが,摂取による症状誘発の「確率」を抗体価から予測するプロバビリティーカーブ(一般的に,抗体価が高いほど誘発の確率も高くなる)が参考になります。食物アレルギーの最終診断法は,食物経口負荷試験です。詳しくは,『食物アレルギー診療ガイドライン2012』をご参照下さい。

【参考】

▼ Stapel SO, et al:Allergy. 2008;63(7):793-6.
▼ Bock SA, et al:J Allergy Clin Immunol. 2010;125(6):1410.
▼ 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2012. 協和企画, 2011.

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