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抗生物質と抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬の相違点

No.4720 (2014年10月11日発行) P.63

八木澤守正 (慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座共同研究員)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

(1)抗生物質と抗菌薬の違いは何か。
(2)抗菌薬に抗ウイルス薬,抗真菌薬も含まれるのか,あるいは異なるのか。代表的な薬品名を併せて。 (群馬県 T)

【A】

(1)抗生物質と抗菌薬の違い
抗生物質(antibiotics)という用語は,ストレプトマイシンを発見した米国Rutgers大学のワックスマン(Waksman, Selman A.)博士が1947年に“微生物が生産し,バクテリアやそのほかの微生物の生育を抑え,さらには破壊するような能力を有する化学物質”であると定義した。“微生物が生産”という製法上の規定と“微生物の生育を抑える”という作用上の規定の2つの規定を含む厳密な定義になっていた。ペニシリンやストレプトマイシンなどはバクテリアの生育を抑える抗菌性抗生物質,アムホテリシンBやミカファンギンなどはカビの生育を抑える抗真菌性抗生物質と呼ばれる。
1953年に国立予防衛生研究所(現在の国立感染症研究所)の梅澤濱夫博士が発見した抗生物質ザルコマイシンは,バクテリアやカビに対する抗微生物活性に加えて,ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞に阻害活性を示し,Ehrlich腹水癌細胞を腹腔内に移植したマウスに投与すると生存日数を著しく延長することが認められたので,世界で最初の抗腫瘍性抗生物質として臨床使用されるようになった。
同様に,北里研究所の秦 藤樹博士が発見したマイトマイシンCやイタリアのFarmitalia Carlo Erba社のアルカモネ(Arcamone, Federico)博士が発見したアドリアマイシン(現在はドキソルビシンと呼ばれる)などが抗腫瘍性抗生物質として実用化された。それゆえ,現在では,ワックスマン博士の抗生物質の定義にある“バクテリアやそのほかの微生物”には癌細胞も含めるように拡大解釈して,“生活細胞の生育を抑え”と表現されている。
(2)抗菌薬に抗ウイルス薬,抗真菌薬も含まれるか
一方,抗菌薬(antibacterial agents)という用語を誰が最初に定義したかは不明であるが,これは“バクテリアの生育を抑える薬”を表す用語である。その定義には製法に関する規定はないので抗菌性抗生物質も,化学的な全合成工程を経て製造されるフルオロキノロン系化合物やサルファ剤なども含まれる。
ただし,“抗菌”の“菌”の中にカビを含めることには異論が多いので,ミカファンギンやフルコナゾールなどの“カビの生育を抑える薬”は“抗真菌薬”と呼んで“抗菌薬”とは区別するのがよいのではないかと思う。また,“抗ウイルス薬”は当然のことながら,“抗菌薬”とは区別して取り扱うことになる。

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