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空腹時にα-グルコシダーゼ阻害薬を投与した場合

No.4720 (2014年10月11日発行) P.60

岡田洋右 (産業医科大学医学部第1内科学講座副診療科長/医局長)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は消化器管内の消化酵素を阻害し,食後の著しい血糖上昇を抑制するとされる。しかし,もともと糖尿病患者は血糖値が高いので,食事を摂らずに同薬を服用しても重症の低血糖は発生しないのではないか。食後高血糖改善薬を空腹時に摂取した場合,どのようなことが起こるか。 (兵庫県 T)

【A】

ご指摘の通り,α-GIは,α-グルコシド結合を加水分解する酵素であるα-グルコシダーゼの作用を阻害し,消化管からの炭水化物の吸収を遅らせることで,食後の高血糖を抑制する。このように,α-GIは食事を摂ることによって作用が発現する薬剤であるため,血糖値が高い糖尿病患者に限って重症低血糖をきたさないということではない。あくまでも,α-GIはインスリン分泌を介さない作用機序のため,健常者でも糖尿病患者でも食事を摂らずに同薬を服用しても,単独投与であれば低血糖をきたす可能性はきわめて低い。しかし,ほかの糖尿病治療薬,特にインスリン分泌促進作用を有する薬剤を併用している場合には,食事の有無にかかわらず低血糖をきたす可能性があるので注意が必要である。
また,ほかの食後高血糖を改善する経口血糖降下薬として,グリニド薬とDPP-4阻害薬がある。DPP-4阻害薬は血糖依存性に作用する薬剤であるので,単独投与であればα-GIと同様に空腹時に服用しても低血糖をきたす可能性は低い。もちろん,DPP-4阻害薬もほかの糖尿病治療薬を併用している場合には,食事の有無にかかわらず低血糖をきたす可能性がある。しかし,グリニド薬はスルホニル尿素(SU)薬と同様に,膵β細胞からのインスリン分泌を促進することで血糖降下作用を促進する。したがって,もしも空腹時にグリニド薬を服用してしまうと低血糖をきたす可能性はきわめて高いので絶対に避ける必要があり,患者に十分な説明をしておくことが重要である。

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