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第Ⅴ因子ライデン異常症の小児処置時における注意事項

No.4703 (2014年06月14日発行) P.66

森岡一朗 (神戸大学附属病院周産母子センター小児科講師)

山田秀人 (神戸大学大学院医学研究科産科婦人科学分野 教授)

登録日: 2014-06-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

第Ⅴ因子ライデン異常症について。特に,小児の処置時における注意事項を。(東京都 H)

【A】

(1)第Ⅴ因子ライデン異常症とは
第Ⅴ因子ライデン異常症は,活性化プロテインCに抵抗を示す先天性凝固・線溶異常症のひとつで,深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の危険因子となる。単一遺伝子病としての第Ⅴ因子ライデン変異の有病率はヨーロッパ系の人種では約5%であるが,現在のところ日本人には認められていない(文献1)。
活性化プロテインCは,第Ⅴ因子および第Ⅷ因子を分解し,その結果,血液凝固を阻害する。第Ⅴ因子ライデンに起こる異常は,活性化プロテインCへの抵抗性を第Ⅴ因子に生じさせ,血栓の傾向を増大させる。第Ⅴ因子ライデン異常症を有する児は,深部静脈血栓症などの血栓症に注意する必要がある。
(2)小児処置時における注意事項
小児における血栓症の50%以上が中心静脈カテーテルに関連した深部静脈血栓症であり,小児の基礎疾患で多いのは腫瘍性疾患,先天性心疾患,外傷である(文献1)。また,重症心身障害児は寝たきりが多いため,深部静脈血栓症を発症しやすい(文献1)。これらの基礎疾患を有する第Ⅴ因子ライデン異常症の児に中心静脈カテーテルを留置する場合は,深部静脈血栓症の発症の危険性が生じることを考慮しておく必要がある。
第Ⅴ因子ライデン異常症の診断は,第Ⅴ因子遺伝子解析に基づいて行う。深部静脈血栓症の診断は,血液凝固・線溶検査や超音波検査で行う。治療が必要であればヘパリンやワルファリンによる抗凝固療法を行う。

【文献】


1) 越智史博:小児内科. 2014;46(2):239-43.

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