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妊娠に伴う高度な高中性脂肪血症への対応

No.4774 (2015年10月24日発行) P.56

永山大二 (新小山市民病院内分泌代謝科部長)

登録日: 2015-10-24

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

妊娠に伴い1000mg/dLを超えるような高中性脂肪血症をきたす症例を時折経験しますが,このような場合,食事療法はあまり奏効せず,薬物も使えず難渋する一方,出産後は急速に中性脂肪値が低下することも多いように思います。こういった症例では妊娠中の急性膵炎のリスクは考慮すべきでしょうか。そうであれば,どのように管理していくべきでしょうか。新小山市民病院・永山大二先生のご教示をお願いします。
【質問者】
齋木厚人:東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝センター講師

【A】

妊娠中であっても1000mg/dLを超える高中性脂肪血症の症例では,やはり急性膵炎の高リスク群として厳重な管理が必要であると思われます。総摂取カロリーを意識するとともに,脂質の摂取量は極力減らす食事療法が推奨されます。また,中鎖脂肪酸製剤の併用も積極的に検討すべきと言えます。急性膵炎を既に発症した場合であれば,絶食の上で中心静脈栄養管理とすることで,速やかに中性脂肪値が低下することが見込めます。
通常,妊娠中に増加する胎盤由来ホルモンやサイトカインが,血清中の中性脂肪を加水分解するリポ蛋白リパーゼに対し拮抗的に作用することで,正常妊婦であっても生理的に中性脂肪値の増加を認めます。しかし,肥満や糖尿病,リポ蛋白リパーゼやアポリポ蛋白A-Ⅴの遺伝子変異といった素因がもともと母体に存在する場合では,妊娠中期から後期にかけて高度な高中性脂肪血症が生じることがあります。
現在,わが国の年間出生数は100万件強ですが,そのうち約0.02~0.03%(200~300人)が妊娠経過中に急性膵炎を生じており,高中性脂肪血症はその主因であると推測されています。したがって,周産期医療に携わる医療者は,妊娠糖尿病だけではなく脂質代謝に関しても意識することが重要と考えられます。
妊娠中に急性膵炎を生じた既往がある症例には注意が必要です。また,中性脂肪値は等比級数的に増加するため,中性脂肪値が500mg/dLを超える妊婦であれば治療介入すべきと思われます。妊娠初期・中期・後期に応じた総摂取カロリーについては,「産婦人科診療ガイドライン」を踏襲した設定でよいのですが,妊娠前体重が肥満に相当する場合は,適宜少なめ(最少では標準体重×25kcal/
日程度)に設定すべきです。その上で,食事由来の脂質は1日30g(10%程度)に減量することが望ましいと考えます。また,中鎖脂肪酸製剤は中性脂肪値の増加を抑制することが期待され,管理栄養士の指導のもとで1日20~30g程度を追加して用いるのがよいとされています。
そのような指導を行っていても十分な中性脂肪値のコントロールが得られない症例については,経過中に腹痛や発熱が生じれば緊急で受診するように患者教育を行うことが重要ですし,もし可能であれば出産まで入院管理を行うことも検討すべきと思われます。もちろん,内科医と産婦人科医が密に連携することが前提となります。

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