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ACOSの疾患概念と治療

No.4763 (2015年08月08日発行) P.56

長瀬洋之 (帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学准教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,「喘息と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)のオーバーラップ」(asthma-COPD overlap syndrome:ACOS)という概念がクローズアップされています。「COPD合併喘息」や「喘息合併COPD」と表記されることもあります。喘息とCOPDのどちらがメインなのか,私自身は少し混乱しています。高齢者でCOPDがあり喘息発作がある症例かとも思うのですが,文献を見ると「COPDのpop-ulationよりも若い」とも書いてあります。ACOSの疾患概念と治療について,帝京大学・長瀬洋之先生のご教示をお願いします。
【質問者】
宮崎泰成:東京医科歯科大学呼吸器内科教授/ 保健管理センター所長

【A】

喘息とCOPDの合併病態はACOSと呼ばれ,増悪が多く,QOLも低いとされています。ACOSの成り立ちは,喘息患者が長期間喫煙した場合と,COPD患者が抗原に感作された場合が想定されますが,これらが病理学的に同一かどうかは不明です。しかし,喘息とCOPDは,お互いが他方の発症危険因子であり,喘息の気道過敏性亢進や肺の発育不全,COPDの気道虚脱は,他方をより顕在化しやすくすると考えられます。
医師の診断に準拠したACOSの頻度は,閉塞性障害患者全体の15~20%,COPD患者の15~20%,65歳以上の喘息患者の25%とされています。検査値を含めた診断基準は確立していませんが,喘息患者において,固定性気流閉塞かつCTでの気腫化や肺拡散能低下を有する頻度は約20%とされています。一方,固定性気流閉塞かつ気道過敏性試験陽性と定義すると(Gibson PG),55歳以上の閉塞性障害患者の65%がACOSに合致するという報告もあり,頻度は定義によって異なります。
この現状を受けて,喘息とCOPDの国際的ガイドラインであるGlobal Initiative for Asthma(GINA)とGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)がACOS診断に関する合同ドキュメントを2014年に発表しました。症候からのアプローチを提唱しており,若年発症,変動性の症状・呼吸機能などの「喘息らしい」症候と,40歳以降の発症,喫煙歴,持続的な気流閉塞などの「COPDらしい」症候を示し,同数の症候を認める場合をACOSとしています。
実臨床では,喘息からみたACOSと,COPDからみたACOSにわけると考えやすいと思います。喘息からみたACOSは,40歳以前に喘息と診断され,喫煙によって気流閉塞が固定したタイプで,比較的診断しやすいと考えられます。CTでの気腫化や肺拡散能低下があれば,なお確定的です。吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)/長時間作用性吸入β2刺激薬(long acting β2 agonist:LABA)を中心とした喘息治療に,長時間作用性吸入抗コリン薬(long acting muscarinic antagonist:LAMA)を上乗せします。最近は重症喘息にLAMAが保険適用となり,ACOS診断にこだわらなくても,コントロール不十分であればLAMAを追加できる状況になりました。
一方,COPDからみたACOSの診断は時に困難です。COPDに典型的な労作時のみの呼吸困難を呈する場合でも,喘息に特徴的な好酸球性気道炎症が隠れている場合があり,注意が必要です。たとえば,CTでの肺気腫と労作時息切れからCOPDと診断され,LABA単剤で加療中のところ,飲酒や季節変化を契機とした症状変動が出現し,当院の検査で呼気一酸化窒素濃度(FeNO)高値,喀痰好酸球陽性と判明した症例を経験しました。ACOSと考え,ICS/LABAに変更し,改善しました。診断のポイントとして,問診上は,(1)若年時の喘息診断,(2)40歳以前の呼吸器症状,(3)早朝や秋季の症状悪化,(4)喘息家族歴,検査値では,(1)喀痰好酸球陽性,(2)FeNO高値,が参考となり,1つでも認めた場合は,ICSを使用すると安全です。COPDと思っても,専門施設では最初にFeNOか喀痰細胞診を検討したほうがよいと考えています。
いずれの場合も,ACOSの治療ではICSを含めることが重要で,最終的にはICS,LABA,LAMAによる3剤治療が基本です。喫煙者ではステロイド抵抗性があり,禁煙も大変重要です。低用量テオフィリンもステロイド抵抗性に対して期待されていますが,今後さらに臨床的な検討が必要です。

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