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小児に対するビスホスホネート製剤の投与

No.4761 (2015年07月25日発行) P.59

望月 弘 (埼玉県立小児医療センター代謝・内分泌科部長)

登録日: 2015-07-25

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

膠原病の生命予後は改善しましたが,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)などではステロイドによる治療が生涯続きます。したがって,小児発症例では,20歳頃までに十分な骨塩量のピーク値を獲得できないため,閉経後や加齢に伴う骨粗鬆症の問題が深刻化することは必至と思われます。そこで,ビスホスホネート製剤が小児期から併用されるわけですが,小児における顎骨壊死のリスクや,成人後に妊娠した場合の胎児に対する影響はどうでしょうか。また併用薬の副作用を考慮して,SLEでは計画妊娠が求められますが,妊娠予定のどれほど前に中止すれば胎児への影響は回避できるのでしょうか。埼玉県立小児医療センター・望月 弘先生のご教示をお願いします。
【質問者】
武井修治:鹿児島大学大学院保健学研究科教授

【A】

小児においてもステロイド性骨粗鬆症は重要な問題となっていますが,その予防と治療に今のところ確立した方法はありません。成人においてはガイドラインが策定され,ステロイド性骨粗鬆症の管理にはビスホスホネート製剤が第一選択薬とされており,小児においても有力な治療薬として期待され,実際に使われています。
以下,ご質問にお答えします。
(1)小児における顎骨壊死のリスク
顎骨壊死はビスホスホネート製剤の重要な合併症であり,近年非常に注目され,日本骨代謝学会からもポジションペーパーが出されています。
顎骨壊死のおよそ94%は骨悪性腫瘍に対する静注ビスホスホネート製剤によるものであり,また現在のところ小児での顎骨壊死の報告はありません。したがって,必要な歯科的診療がしっかり行われていれば,小児におけるビスホスホネート製剤の投与について,顎骨壊死に関してはそれほど心配する必要はないと考えます。
(2)成人後に妊娠した場合の胎児に対する影響
2014年改訂の「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」によれば,2008年までのレビューにおいて,妊娠前あるいは妊娠中のビスホスホネート製剤の投与例が51例ありましたが,児の奇形や骨格異常はなかったと報告されています。したがって,現在のところ,明らかに胎児に影響があったとする報告はないと思われます。
(3) 妊娠予定のどれほど前に中止すれば胎児への影響は回避できるのか
妊娠可能な女性にビスホスホネート製剤を使用する場合には,将来的に母児への影響が懸念されますが,現在までにヒトに関する正確な報告はありません。また,妊娠に対して安全な休薬期間や使用中であった場合の中絶の適応などに関する指針もありません。したがって,ご質問に対する的確な答えは現在のところ,存在しないと考えます。
ビスホスホネート製剤のうち,リセドロネート,ミノドロン酸,イバンドロネートは,妊娠または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。また,アレンドロネートでは少数ながら妊娠初期における投与症例の検討があり,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には投与について考慮することができる,となっています。
いずれにせよ,積極的な投与が推奨されるものではありませんので,ビスホスホネート製剤投与中に妊娠が明らかになった場合には直ちに休薬することが望ましいと考えます。また,妊娠する可能性がある女性にビスホスホネート製剤を投与する場合には,個別の症例ごとに丁寧かつ十分な説明とインフォームドコンセントが必要とされています。

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