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MCI・軽度認知症の診断

No.4741 (2015年03月07日発行) P.52

神﨑恒一 (杏林大学医学部高齢医学教授)

登録日: 2015-03-07

最終更新日: 2016-11-09

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【Q】

高齢者の認知症の増加が問題となっており,その前段階と言える軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の人も約400万人と推定されます。残念ながら,MCIや軽度認知症の人の多くは必ずしも正確に診断されておらず,介入も十分ではないと考えられます。非専門医が心がけるべき診断のコツや介入方法について,杏林大学・神﨑恒一先生にご回答をお願いします。
【質問者】
荒井秀典:京都大学大学院医学研究科人間健康科学系 専攻教授

【A】

MCIは認知症ではありませんが,知的に正常とも言えない状態を指し,認知症の前段階である可能性があります(図1)。Petersenらの定義では,(1)本人および家族による記憶障害の訴えがある,(2)年齢不相応な記憶障害がある(詳細な認知機能検査が必要),(3)全般的な認知機能は保たれている〔Mini Mental State Examination(MMSE)の得点が24点以上など〕,(4)日常生活は自立している,(5)認知症とは言えない,となっています。すなわち,記憶障害はあるけれども日常生活に支障はない状態と考えられます。
MCI者の認知症への移行率は1年間で15%程度,5年間で50%程度とされています。稀ですが,MCI者が正常に戻ることもあります。したがって,MCIが認知症に進行するのか,その可能性は低いのかを診断(予測)する必要がありますが,MCIの段階で,対象者が図1の点線のように緩徐に経過するのか,実線のように比較的早く進行するのかを予測するのは,容易なことではありません。
J-ADNI研究などで髄液検査,アミロイドPETなどがアルツハイマー病への進行を予測する上で有用である,と報告されていますが,正式な発表を待つ必要があります。また,SPECTも予後の予測に役立ちます。しかしながら,これらの検査は専門病院でしか行えません。実地臨床では,Petersenらの定義に出てくるMMSE得点,日常生活が自立しているかどうかが重要です。
MMSEやHDS-R(Revised Hasegawa’s Demen-tia Scale)は簡易な全般的認知機能検査であり,それぞれ23点以下,20点以下の場合,認知機能に問題がある可能性があります。しかしながら,点数だけで認知症と診断してはいけません。
また,日常生活動作(ADL)として手段的ADLが重要です。手段的ADLの評価は,電話の使用,買い物,食事の準備,家事,洗濯,乗り物を使った移動,服薬管理,金銭管理の8項目で行い,おおよそ独居機能の評価方法です。認知機能の低下のために,これらの機能が遂行できない場合,認知症である可能性が高くなります。
以上より,MMSEまたはHDS-Rと手段的ADLを評価することがMCIか認知症かを鑑別する上で重要です。
MCIは放っておけば約半数の人が5年以内に認知症になる可能性があるので,進行の有無を半年,もしくは1年単位でフォローする必要があります。その際,生活をともにする家族からの情報が重要です。
MCI者の認知症への進行予防,もしくは軽度の認知症者の進行予防策として,(1)生活習慣の改善(禁煙,肥満防止,緑黄色野菜の摂取など)と生活習慣病の管理,(2)定期的に運動する,(3)知的活動に従事する,(4)積極的に社会交流を行う,などを挙げることができますが,エビデンスレベルとしては高くありません。実地臨床では(1)~(4)をできるだけ多く実行することが勧められ,逆の言い方をすれば“うちにいて何もしない”人は進行しやすいということになります。
最近,国立長寿医療研究センターの島田先生らは,引き算をしながらウォーキングをしたり,しりとりをしながら踏み台昇降を行うなど,体と頭の両方を刺激することでMCIの認知症への進行が予防できたことを発表し,注目されています。

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